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なかのあずま
なかのあずま
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機動戦士Oガンダム

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第3話 パトリシア〜Limone Patricia Plukka〜



 カピラバストゥコロニーに、一隻の戦艦が向かっていた。
ネオ・ジオン所属エンドラ級巡洋艦ゼーレーヴェ
 メインブリッジのスクリーンにはCG処理された宇宙空間ではなく、ただ真っ暗な画面があった。しかしブラックアウトしているわけではない。
 「今からプロトタイプ・キュベレイに入っていた記録映像を流すわ」
 クルーがブリッジに揃い、ゼーレーヴェ艦長キューベル・ポルシエによるフルスクリーン再生が始まった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――
 コックピット内の全天周囲モニターが起動し、格納庫内の映像が映る。
 前方の外へ続くハッチに近づくと、機体の右手首からビームを発射し、宇宙が顔をのぞかせた。
 「―――っはぁっ はぁっ はぁっ…!」パイロットの荒い吐息が漏れる。「これで…最後だからっ・・・!」
 虚空に吸い込まれるように、フットペダルを踏み込んで格納庫を抜け出すと、真空の闇が360度の全天周モニター一面に広がった。

 どこを目指すわけでもない、ただあてもなく逃げるしかなかった。
『ピピピピピピピピピッ』
 警告音が鳴る。それはこのプロトタイプ・キュベレイがロックオンされたことを知らせていた。
 幸か不幸か、前方に宇宙のゴミ留場であるスぺースデブリ群の宙域があった。
 「あそこしかない・・・!」
 機体からミノフスキー粒子を散布させ、今にも激突しそうな幾多の戦争の残骸の間を縫うように進む。
 突如フレームの端から光弾がかすめていきモニターがまばゆく光った。辺りを探ると、骸となった戦艦があった。その中をゆるりと進む。
 ヴンッ
 「・・・・ファンネル」
ビームの粒子が刃の型を成すと所構わず無造作に振り回し、静かにファンネルを射出した。

「きた・・・!」
 後方に気配を感じ180°旋回すると、ガルスJの宇宙用特化型でありゼーレーヴェ隊率いるダイアズの紫色の機体、ガルスFがあった。<改ページ>
 モノアイがこちらを捉え、速射ビーム砲を構える。
「今だっ!」
 射出したファンネルで背後の壁を焼いて脱出、筒と化した骸の両側からその中心にいるガルスFに粒子を放った。骸が爆光をあげた。
「ダメかッ・・・!」
 光弾の嵐は、スパイクシールドと速射砲によって防がれた。ガルスFが硝煙を掻き分けこちらに迫る。
 経路を定め逃走を図ると、新たな気配を感じた。
 無重力で上下左右は皆無だが、上の方向から白い機体、R・ジャジャの先行試作タイプがビームサーベル片手に襲い掛かり、振り下ろされるソレをこちらもビームサーベルで防いだ。
 「くぅっ!」
鍔迫り合いの最中、左右からミサイルが飛んできた。
 プロトR・ジャジャのサーベルを振り払いながら後方へ下がり、ミサイルを同士討ちにさせてその方を見ると、2機のガ・ゾウムがプロトタイプ・キュベレイを挟み撃ちにする形でミサイルランチャーを構えていた。
 相手の姿が見えなくなった瞬間を狙い、R・ジャジャをくぐり上方向を目指す。その後をガルスFが追い上げるように再び迫ってきた。
 『逃がすな!ぜったいに捕えろ!』
 彼女の常人ではない空間認識能力がダイアズの声を捉える。
「ファンネルッ!」
 ファンネルが再び戦場に舞うと、粒子がガルスFの四肢を切断し、コックピットを焼いた。ガルスFは全機能を停止し、ダイアズは骨も残らなかった。

 『ビ―――――――――――――ッ』
 それから、なんとか距離を離しつづけた彼女だが、それも終わりに差し掛かっていた。
「推進剤が、もうない・・・」
 プロトタイプ・キュベレイの推進剤はなくなりつつあり、このまま逃げ切れる望みは薄かった。さらにバツの悪いことに、二機の機影が近づいていた。
 「ここまでかな・・・・・」
ところが
 「・・・・・?」コックピットのディスプレイは、一つの艦影を捉えていた。<改ページ>
「あれは・・・補給・・・艦・・・?」
 さらにズームしてみると“Space Supplies Delivery”とペイントされている、補給艦までの距離はそう遠くはない。
 「ここでお別れだね・・・今までありがとう・・・・」
プロトタイプ・キュベレイのタイマーが入り、パイロットは補給艦に向かって脱出した。
――――――――――――――――――――――

 スクリーンが白くなり、再生が終了した。
ブリッジが静寂を取り戻すとキューベルは
 「最後に映っていたあの補給艦に行ったとみて良さそうね・・・・・ブラックボックス回収地点と映像のデブリ群の軌道から方向を割り出せないかしら?」
とオペレーターのアルマに尋ねた。
 「わかりました!」
 アルマが計算をしている間、キューベルは眉間に皺をよせながら睨み付けるようなまなざしを送った。もちろん彼女にではなく、この計算が割り出す結果に対してである。
 「出ました!」彼女の活発な声で、キューベルの眉間の皺が消えた。「あくまで計算上ですが・・・火星圏、この艦の進行方向と重なります!」
 「・・・・・・なんとまぁ偶然ですこと」キューベルは自嘲気味に口を歪め「いつでも配置につけるようスタンバっといて!」と言った。

                    ≠

 あたりまえの日々が崩れ去る。
九年前―――――――2人の兄妹は、父と母を失った。
 日常は戦火に焼かれ、それからは兄の手を掴んで温もりの無い闇を歩きつづけ、やっと辿り着いたのは屍が歩く街。
 そんな中でも生きてこられたのは、再び日常を取り戻せたのは、兄が父と母の代わりになってくれたから。
 『行ってきます』
 いつも聞いていた言葉と共に兄はこの家を出ていった。
あたりまえの日々が、再び戦争に奪われた
<改ページ>
 なぜ行ってしまうのだろう?

いつも淀んでいる景色が今は一層淀んでいた。
「港に行かなきゃ・・・・」
 誰に言うわけでもなく空に向かって吐き出し、部屋を出る。
力の入らない体を無理に動かし、ファナは港へただただ走った。

 港には小型の戦艦が泊まっていた。群衆に埋もれながら許す限りの声を出して兄を呼んだ。
 その声に応えるように、艦から2つの巨大な光があらわれた。太陽光の加減で金色に染まる港で、モビルスーツの白い装甲が乱反射を起こしていた。
 彼女は光の一つに向かって無意識に叫び続けた。
喉から息しか出なくなっても、届くまで何度も
 しかし、時間はずれの黄昏が港を染める中、無情にもタロを乗せた舟はいってしまった。
『もう、戻って来ない』
 そう悟ったファナの頬にはスゥッと一筋の轍ができていた。


 どのくらいの時間が経ったのか、港はいつもと変わらぬ様子を取り戻し、群衆もまばらになっていた。「あ〜の〜」
 その中で、ファナはただ港を見つめてたたずむ。「お〜い…」
艦が去り、穏やかになった港の喧騒が、風と共にすり抜けていく。
「ねぇっ!」
 ファナはいきなり肩を掴まれた。反射的に手を振り払って振り返ると、声のトーンよりも大人びた女がいた。
 「あっ、ごめん…!ちょっと気になっちゃって」
「あっ…えっ・・・?」
 「どうしたのかな?って!」