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なかのあずま
なかのあずま
novelistID. 54195
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機動戦士Oガンダム

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第5話 無題



 「なぜ火星圏なんだ?」
「えっ?」
 火星圏へ向かう補給艦の操舵席で、シャアは唐突にカーン・Jr.に尋ねた。「いくら連邦の目が届かないとはいえ、これでは物資の補給もままならないだろう?」
 「あ、あぁ、アクシズからの援助があるからな」
 「ほう、それなら君の『姉』はよっぽど肩入れしているらしいな」
 「いや・・・正確にはグレミー・トトという者からだ」
 「グレミー・トト?・・・ハマーンの直属か?」
 「詳しくはわからない、顔くらいしか・・・指令書でしかやり取りしていないし・・・」
 なんともあやふやな情報にシャアは眉をしかめた。
 「アクシズの人間というのは間違いないのか?」
 「それは間違いない。ただ・・・随分若く見えた」
 「そのグレミー・トトとやらは誰かの差し金なのか?でなければ」
 「グレミーを騙った何者かの指示・・・?」
「まぁいいさ、まともな補給があるという事はアクシズと見ていい。それより、なぜ火星圏なのかを教えてくれるとありがたいんだが」
 シャアはそれまで僅かに外していた視線を明確にカーン・Jrの目に向けた。
 「他に目的があるのか?」
 アウターガンダムを勝手に一人の少年に渡したこの男をどこまで信用していいものか・・・とカーン・Jrが口ごもるとシャアは「私もおまえと目的は同じはずだ」と適当なことをぬかした。
 「えっ?そ、そうか、そうだな、疑ってすまない」カーン・Jr.は容易く術中にはまる。
 「いや、疑われて当然のことをしたのだ。すまないと思っている」
 「そ、そうだな・・・まず」この時、カーン・Jrには視えてなかったが、シャアの口元は、わずかに歪んでいた。「我々が火星圏に行くのは、さらに遠くへ、木星へ行くためだ」
 「ほう?」
 「シャリア・ブル、パプテマス・シロッコ…お前にとっても馴染みはあるだろう?」
 「・・・あぁ」
 「この二人の共通点はニュータイプであり木星帰り、つまり」
 「ニュータイプは木星に大きく関係しているということか」<改ページ>
「そうだ。なぜそうなるのかは見当もつかないがな・・・そういう素質を持った粒子や細菌が漂っているって話もある」
 何と眉唾物な話題だろうか。いや、広大な未知の領域においてはそうも言い切れないが。
 「・・・あと、これはあまり知られていないことだけど…木星に行った人達はほとんど必ずと言っていいほど『何か』を視るんだ」
 その時、存在を消してたカーン・Jr.の部下ウィノナが口を開いた。「アリエス基地から通信が入りました」
 「よし、繋げ」
 回線がつながると次の瞬間、“アリエス”という美麗な響きから想像もつかないほどの醜悪なブ男の顔面がデカく映し出され、カーン・Jr.は思わずひっくり返りそうになった。
 「・・・そうか、この男がグレミーか」
 「そんなわけないだろ!!誰だ貴様!?」
 髪が一本もない頭に、瞼と顎に随分な贅肉が着いたずんぐりとした顔は見れば見るほど醜悪な面構えだ。
 ≪お初にお目にかかります、カーン・Jr.様、そして・・・≫瞼で殆ど隠れた眼球がシャアを見た。≪シャア・アズナブル大佐、いえ・・・総帥≫
 シャアの顔が真剣身を帯びる。
 ≪私はヨドルフ・ヒトーリン、こちらで総帥の代わりを務めさせていただいております≫
 旧世紀の独裁者の名を足して割ったような名前の男は画面を通しても臭ってきそうな下卑たにやけ面で自己紹介をした。
 「グレミー・トトという者に代わっていただけないか?」
 するとヒトーリンの表情からそれまでのにやけ面が消え、いぶかしげな表情になった。≪グレミートトという者はこちらにはおりませんが・・・≫
 人間離れした顔をしているが割と表情豊かである。案外正直者なのかもしれない。
「そのはずはない、この指令書はそちらがよこしたものだろう!」
 お互いに共有された画面上にアリエスからの指令書が表れるとヒトーリンは訝しげな表情でしげしげと舐めるように見た。
 ≪確かにこちらから送ったものですが・・・・・確かにグレミー・トトと書かれていますな≫ 彼の頭上にはいくつものクエスチョンマークが浮かんでいた。どうやら本当に身に覚えがないらしい。
 「まぁいい、そちらが送ったので間違いなければ問題はない。今更引き返すわけにもいかんさ」
 ≪はぁ・・・ではお待ちしております≫<改ページ>
 「ヒトーリン、私は本来の目的を聞かされていない。火星圏で何をしているのか教えてもらえないか」
 ヒトーリンの顔に再び臭いつきのスマイルが戻り≪ジオンの再興ですよ≫と言って通信が切れ画面が暗転した。
 「私はその方法を聞いたんだがな」やれやれとでも言うようにシャアは肩をすくめた。

                    ≠

 ≪パトリシアはどこだああああああああ!≫
 クルーがマイクロ・アーガマへ帰艦しメインブリッジに近づくと、騒がしい声がドアの向こうから豪速球で叩きつけられた。どこぞの誰が発狂しているのか。
 「パトリシア?誰?」
 先の戦闘でそれぞれの神経をすり減らした彼らは今すぐにでも眠りにつきたかった。クシナにとっても消化不良に終わり、彼女はいささか不機嫌であった。
≪だから何度言ったらわかるんだこの野郎!≫≪鎮静剤早く!≫
 一人の発狂した青年が数人がかりで捕らえられている、それがメインブリッジに入ってまず飛び込んできた光景だった。
 「俺ちょっと休みたいんだけど」
 ニロンは拳を握りしめると騒動の中心人物へ近づき
「ただ今もどりましたあああああああああ!!!」
喧騒の源である男を殴り飛ばし「じゃあ俺ちと休憩しますんでまたなんかあったら」自分の個室に向かっていった。
 「で?誰なんだこいつは」ニロンの拳を食らい、気を失って無重力に身を任せている男を見てグランが言った。
 「君が出撃した時に侵入してきたんだよ」
 オスカの手には鎮静剤が握られていた。ニロンが殴らなければあと一歩で針が男に突き刺さっていたのだろう。
 「・・・あ」
 「あ?どうした?」
タロが何かを思い出して口を開いた。
「いや、あの…さっき戦った人が、パトリシアを渡せば引き上げるって」
「そんなこと言われても知らないもんは知らないよ!」クシナは子供の様に頬を膨らませた。
「とりあえずこいつしまっときますわ」
 メカニック班のオリガは、この男を独房室へ運んでいた際に意識を取り戻して取り乱した彼と一悶着を起こしていた。<改ページ>
 「また暴れたら面倒だから誰か手伝ってよ」帰艦したばかりの彼らを巻き込むように言った。
 「おい、お前も手伝え」
 「え?あ、はい!」

 オリガが気を失っている男を肩で担ぎ、グランとタロはその後をついていくように独房室へ向かう。その道中
 「モビルスーツに乗るといつもあんな感じですか?」
 タロの漠然とした質問に、グランは呆気にとられた顔を向けた。タロ自身のボキャブラリーでは先ほど味わった感触をうまく言語化できない。
 「なんていうか・・・戦っているうちに自分に馴染んでいくというか・・・」
 「そりゃ何戦かやった後の話だ。たった一回の、いや二回目か、その程度の場数で慣れてくなんてことはほとんどねぇ。