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なかのあずま
なかのあずま
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機動戦士Oガンダム

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第10話 黄昏の渦〜Twilight Tourbillon〜



ニュータイプ―――――
 類人猿からの急激な進化を経た人間の、宇宙への環境適応能力が生み出した次なる段階の萌芽である。
 常人よりはるかに高い空間認識能力と超感覚的知覚を持ち合わせた次世代型の人間と言えばわかりやすいだろう。
 ここでいう超感覚的知覚は超能力よりも第六感の事と思っていただいてもかまわないのだが、世間では千里眼のようなエスパーとして捉えられていたりもする。
 人類が棄民をきっかけに宇宙へ進出してから早半世紀以上の刻が経ち、そう呼ばれる人々が現れていた。
 しかしそれは時としてオールドタイプと呼ばれる者たちの、まだ目覚めていない者たちの餌食になってしまう。ニュータイプの数が圧倒的に少ない故に、彼らは強制的に戦場に駆り出されることすらあるのだ。
 さて、ここで一つ問題
ニュータイプが戦争の道具にされないためにはどうすれば済むだろう?
 答えはいたって簡単。
限られた同種をかき集め、目覚めていない者たちは覚醒させる。つまり数を増やせばよいのだ。
 あるいは、力を手に入れる。
力とは立場であり、権力である。
 しかしその力を手に入れるにはとても険しい荊の道を歩むことになる。たとえ人より感覚が優れていたところで、力が無ければ道具で終わってしまうのだ。
 ところが時折その道を歩む靴が手に入る事がある。その靴は自分で探し出すか、偶然にも見つけるか
 さて、この物語の登場人物にはそんな者が2人いる。一人はタロ・アサティ、
そして―――――

 エスタンジア――――――かつて第二次大戦以降、ナチスの残党が逃げ延びた幻の地としてまことしやかに囁かれていた。
 その名は今、反地球連邦と反ネオ・ジオンの連合義勇軍の名として水面下で根を伸ばしている。
 その徒党を束ねるのは齢十一歳のアドルフ・ドゥカヴニー。
 彼はなにも急にこの地位に就いたわけではない。かつてニュータイプ研究所に被検体として身を置いていた彼への、一つの実験が事の始まりだった。
 ニュータイプ実験開発にサイコミュ搭載モビルアーマーなどが主流になっている中で、(サイコミュとはニュータイプの発する特殊な脳波を利用した機体制御システムである)
 彼のいた研究所ではモビルスーツなどの白兵戦闘空域におけるサイコミュシステム搭載新型戦艦の開発計画が秘密裏に進められていた。<改ページ>
 それに伴うニュータイプによる指揮系統の形成データ採集のためにアドルフにエンドラ級巡洋艦バレンドラが与えられたのだ。
 アドルフは、研究員という大人のいうことを静かに聴いている内に次第にこのような思いが芽生えた。
 『なんでこいつらに利用されてるんだ?』
 そして、自身の担当研究員が地球圏を離れたのをいいことに彼は、与えられた巡洋艦で海賊宙域への逃走を図り、今に至った。
 ひとえにニュータイプと言っても所詮は子供、ある程度の精神的年季が無ければ力も発揮することはない。彼がもう少し歳を経ていたらもっと狡猾なやり方ができただろう。

 一方、もう一人の靴を与えられた少年、タロ・アサティの中では緩やかな葛藤がおきていた。
地球降下作戦時「戦争が無けりゃ平和なのか」とニロンは訊いた。
 確かに戦争で流されたコロニーに戦争はなかった。しかしコロニーで過ごした日々は平和だっただろうか?
 記憶の底に微かに残る戦争以前の、父と母がいた、まだ家族で暮らしていた頃の方が心に安らぎがあった。
 戦争さえなければと何度思ったことだろう。
 家族を引き裂かれ、ファナと二人で何とか生き延びる道を探し、タロは誰に頼ることも甘えることも出来なかった。コロニーの乾いた大地は、心をやせさせていった。

 いつからか、ファナを守るという思いが心のよりどころになっていた。
 そんな中、突如として垂らされた赤い蜘蛛の糸は、彼をいつの間にかこんなところにまで引き込んでいた。
 戦争が終われば本当にあの頃に戻れるんだろうか
 父さんも母さんも、もういないのに
 なんで俺はここにいるんだろう
 戦争を終わらせるため?戦争が終わってからは?
 あのコロニーからファナを連れてどこへ行けば・・・
地球降下作戦以来、そんな漠然とした思いがタロの中で湧き上がっていた。
 「聞いているのか?タロ・アサティ」
 「えっ?あ、あぁ」
エスタンジアを率いる少年、アドルフ・ドゥカヴニーの声でタロは我に返った。
 「次の作戦は君のアウターガンダムにかかっているんだよ」<改ページ>
 「わかってる。で、ダカール制圧は?」
 「え?」
 「あ、いや…魂を引かれた奴らがダカールにいたから・・・あいつらが戦争を引き起こしてんじゃないかってさ」
 「・・・・・そのために戦力を補充するのが今回の作戦だ。
 ただでさえ少ない戦力を君に半分も削られたんだ、その分きっちり働いてもらう」
その靴を手に入れたとしても最後まで履き潰さずに歩けるとは限らない。

 宇宙世紀0088、ジオン残党勢力アクシズがネオ・ジオンとして蜂起し、後に第一次ネオ・ジオン抗争と呼ばれる歴史の傍らで、記録に残らない小さな戦争があった。

                    ≠

「あーもう!どこよ総統室は!!」
 ゼーレーヴェ隊がアリエスに着いて数日、ネオ・ジオン総帥であるシャア・アズナブルからの呼び出しがあった。
 人が出払っているのか、案内人すら確保できていない彼ら、主に艦長であるキューベルはシャアを探し当てるのに躍起になっていた。
 「だいたい赤い彗星をとうとうこの目で拝めるって時になによ身体検査って!失礼だと思わないのかしら勝手に人を病人扱いして!」
 「そりゃこんなへんぴな場所で変な病気が流行ったら困るからじゃないですかねぇ」
 「うるさい!」
迫水はこういう時になだめ役のつもりなのだがご覧のとおり火に油を注いでしまう。
 「そういえばシャアって少し前にダカールで演説してたよな?」
 迫水は特にリアクションもせずに話題を変えた。エヴァが「それ見たぁ〜」とのんきに返すのをよそに
 「あぁ、その時は名前を変えてエゥーゴにいたらしいが」東條が応えた。
 「そんで次はネオ・ジオンの総帥かぁ・・・お忙しい人だ」
 「あ、ここじゃないすか?」ギュンターが指さした先には、総統室と書かれた扉があった。
 キューベルはゴクリと生唾を飲み込み「ゼーレーヴェ隊隊長キューベル・ポルシエ以下4名、総帥にごあいさつに伺いました!」「艦長じゃないの?」
「入りたまえ」<改ページ>
扉の向こうからテレビやラジオで聞いた声に胸を押さえ、ゆっくりと扉を開けた。
 部屋には総統執務室よろしくソファーと木彫りのテーブルが両脇に置かれ、ソファーにはその声からは似ても似つかないあどけない少女が座っていた。
「みっ、ミネバ様・・・・?!」
 予想外の人物に一同が呆然としていると「そこで固まられるのは困るな」奥の総統机に、声の主であるシャアの姿があった。
 「え、えと…あの・・・」憧れの赤い彗星よりも近くの距離にいる王女を目前に、キューベルの思考回路は停止していた。
 「座りたまえ、君たちの話も聞きたい」