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なかのあずま
なかのあずま
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機動戦士Oガンダム

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第2話 ロストシティのタロとファナ?Under Pressure?



 O−アウター−ガンダムのコックピット内で、タロは身が竦んでしまっていた。
 全天周囲モニターが映し出した外の映像には、3体の巨人が一つ目をこちらに向けていた。
 そのうちの一機がこちらに歩み寄ってくる。誘われるように乗りこんでしまったことを後悔し始めていると、目の前のそいつから通信回線が入り、若い男の声がした。
 ≪では向かいましょう、総帥!≫
 「だれ・・・あんた・・・?」
 ≪・・・・・・誰が乗っている?≫
 G・ザックのパイロットは聞き覚えのない声に敵意を剥き出しにすると、右アームに掴んでいたビーム・ホークを振りあげて丸腰のアウターに向かってきた。
 『避けなきゃ』
 タロは漠然とそう感じ、フットペダルを踏み込んでスラスターを噴かした。機体が後方へスライドし、G・ザックの攻撃は空振りに終わった。
 G・ザックの口にも見えるラジエーターからシュウッっと息のように熱が噴き出し、モノアイがじろりとこちらを向く。
 ≪答えろ・・・誰が乗っているんだぁっ!!≫
 その後を追うように、後方の2機のG・ザックもマシンガンを構えながらアウターの元へと迫ってきた。
 『囲まれる』
 タロがアウターに搭載されているであろう装備を探ると、モニター上の機体の両前腕部が点滅した。
 そのまま手順を進めると両前腕部の手の甲側がカバーのように開き、そこからビームの粒子がサーベル状に形成された。カバーの内側にはビームサーベルの柄が収納されていたが、手に握らずにそのままクロスして防御の態勢を取った。
 ≪答えないのなら貴様ごと焼いてやる!≫
 一機がビーム・ホークで斬りかかってくる中、後方の二機がマシンガンを放ちながら左右に分かれた。三方向からの攻撃態勢が出来上がり、アウターは囲まれた。
 アウターの装甲であればマシンガンの弾は弾くことができるかもしれない。しかし、ビーム・ホークともなれば防げる保証はない。
 下から抉るように来るビームの刃を後方へのステップで避ける、そうこうして躱している間に、両側からの二機もビーム・ホークに持ち替え迫ってきていた。
 万事休す、かと思われたとき、またしても通信が入った。先とは違う声が叫ぶ。<改ページ>
≪コックピットをやれ!≫
 振り上げてガラ空きになったG・ザックの胴体中央を狙い、右腕を正拳突きの如く突きだした。
 ビームの粒子が、コックピットをパイロットごと焼いた。瞬間
『え・・・・・?』
虚無感がタロを撫でていった。
 サーベルを引き抜くと、モノアイが事切れるように消灯し、G・ザックの全機能が停止した。
 残った二機の内の一機が進撃を止め、引き上げる合図をした。もう一機がそれに従い、共にスラスターを噴かせてアウターが地下から開けた穴へ抜けていった。
 タロは追いかけなかった。
港の方で小型艦が入港していた。
                    ≠
 コロニーに入港するや否や、ジョブ・ジョンはニロン機とグラン機に通信回線を入れて様子を伺っていた。「被害状況は?」
 ≪中破しましたが何とか無事です≫
≪同じく≫
 「了解、救援を向かわせるから待機していてくれ」
 小型艦と言えどそれなりの大きさはある戦艦だ。市街地の中に降り立てるような場所はない。
 「クシナ、Z Mk-?で向かってくれ」
「了解」
 艦唯一の女性パイロットであるクシナ・カーデンロイドに救助命令を下すと
「あーあ、最初っからゼータ出しときゃよかったなぁ」
独り言のようにオスカとマーカーに投げかけた。

 クシナはノーマルスーツに褐色の肌を通し、黒いおかっぱにメットを被った。細身なのでするりと入るが、少し胸がきつい。
「ZガンダムMk-?、クシナ、救助に向かいます!うわあぁぁっ!」
 マイクロ・アーガマのカタパルトから勢いよく飛び立ったはいいが、早くも勝手の違う慣性に翻弄されていた。
                    ≠
≪何で追わなかった!≫<改ページ>
≪なんで俺がやらなきゃいけないんだよ!≫
 戦場跡地ではタロとグランが外部スピーカーで口げんかを繰り広げており、その声があたりにまで響き渡っていた。
≪てめぇなんかガンダムに乗ってなきゃなぁ≫
「お待たせしました!うわぁ・・・・」
 グランがいくらでもぶん殴ってやると言いかけたところでZガンダムMk-?が到着し、有り様を見たクシナはぼーぜんとした。
 「えぇっと・・・御二人を回収しに参りました!こっちは・・・・」両脚を切断されて立つこともできないジム・セークヴァにモニターがズームしていた。
≪ニロンだ≫
 「ニロンさんは私が担ぎます、それと…」
クシナは右腕の無いグラン機と対面する白いモビルスーツを見た。

 タロはZ Mk-?の視線が自分に向けられていることに気づき
「・・・えーっと、俺は降りるので誰か持ってっちゃってください」というとディスプレイに外部通信の表示がついた。それに応じると女性の顔があらわれた。
 ≪あ!降りなくて大丈夫≫
「え?」
≪いやーうち人手不足だから!≫
タロが状況を呑み込めないでいる中で彼女は陽気に笑った。
 「そんなこと、もっといるでしょ?」
 ≪艦長とかオペレーターはパイロット出来ないからねぇ≫
 「…こんな簡単なのに」タロは軽く舌打ちした。「そうだ!艦長って人が偉いんだろ?その人が許可しないと」
 ≪大丈夫だと思うよ?代理だし≫
 「あ、そっすか・・・」タロは深くため息をついた。
≪とにかく持ってきてよ!今も人足りてないんだから≫
「わかったよ!持ってくだけですからね!!」

 アウターがマイクロ・アーガマのデッキに収容され、渋々従ったタロがコックピットから降りると艦長のジョブ・ジョンが底抜けに明るく出迎えた。<改ページ>
 「やぁ!俺がこの艦の臨時艦長をやっているジョブ・ジョンだ。普段は主にメカニックの仕事とかやってんだけど今回は恩師に頼まれてね、あはは!」
 彼はあいさつを済ませた傍からしばらくアウターを眺め、子供のように「すごいなこれ!」とはしゃいでいた。
 「じゃ、俺は帰ります」さっきまでの緊張感が一気になくなったせいで調子が狂いそうだ。タロは一刻も早くここから離れたかった。
「おっと待ってくれ!君にはいろいろ聞きたいことが」
 「俺はこいつをここに届けるために来たんです!もうここにいる意味ないでしょ」
 この少年に小細工は通じないとわかり、流石の彼も少し気を引き締めた。それまでの落ち着きのない態度をがらりと変え、ピリッと緊張感を走らせた。
 「君がシャアと会って何を話したかを教えてくれるかい?」

 まともに大人の相手をするのは何年ぶりだろう、シャアとは違うタイプの“普通の”大人にタロは怖気づいた。決して気圧されているわけではない。包み込むような、それでいて鋭い刃を向けられているような感覚だった。
 しかし、タロが言葉を返せないのはそればかりではない。

  シャアにニュータイプの魁になってくれと言われた

 なんてことを話せばどうなるか?阿保らしいと離してくれるか?それならそれで結構だが十中八九拘束されるのがオチだ。