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同調率99%の少女(7) - 鎮守府Aの物語

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--- 2 艤装を試す



 工廠についた4人は、先に戻っていた明石が出してきた軽巡洋艦川内の艤装を目の前にしていた。
「これが川内の艤装です。まぁ那珂とは姉妹艦なので、細かな違いはあれどほとんど同じです。ちなみにネームシップです。」
 そう説明して川内の艤装の各部位をキュッキュと撫でる明石。新品なので丁寧に扱っている様子。

「あたしは川内の同調に合格しているから、いまさら試験みたいなのしないよね?」
 那美恵は提督の方を向いて尋ねる。提督はそれに対して頷いた。本当にただの動作チェックをするだけと那美恵たちに説明をした。
「じゃあつけまーす。」
 那美恵は明石に艤装の装着を手伝ってもらい、数分後装着し終わる。ちなみに高校の制服のままである。

「じゃあ那美恵ちゃん。同調始めて。」
「はい。」
 那美恵は目をつむり呼吸を整える。頭の中に那珂のときとは違う何かの情報・記憶の情景が浮かび上がっては消える。さながら走馬灯のように。ほどなくして体中の関節がズキッとしたあと、全身の感覚が人間光主那美恵のものとは違うものに変化した。
 その瞬間、那美恵は軽巡洋艦艦娘、川内へと切り替わった。

「……なみえ、同調終わったの?」
「うん。今のあたしは川内だよ。」

 川内となった那美恵をまじまじと眺める三千花。一般人から見て、違いなぞ全くわからない。しかし装着している本人とて、明確な違いはわからない。
「ふぅん。わからないわ。私じゃ全然違いがわからない。なみえはなにか違うってわかるの?」
「ぜーんぜん。同調したときに那珂のときとは違うイメージっていうのかな? 頭のなかに流れ込んでくる感じがしたけど、それ以外は特に変わらないなぁ。あ、でも……那珂の時よりなんとなく艤装が重い感じがする。那珂のときの身軽さっていうのがないよ。なんでだろこれ?」

「それは同調率の違いですね。」明石がサラリと述べた。
「同調率の違い?」
 三千花が聞き返した。
「はい。艤装の元になった技術Aを使った機器はみんなそうなんですけど、同調率が高ければ高いほどより体に馴染んで、何もつけていないかのように身軽に感じられながらも、本来の人体の限界を超えた動きができるようになるんです。その逆で、同調率が低いと、馴染んでないということになるので、その分機器本来の重量の一部が感じられてしまうんです。那美恵ちゃんがちょっと重いと感じるのは、那美恵ちゃんにとって那珂の艤装がものすごく軽く感じるくらいに体に馴染んでいるからですね。だから那珂より同調率の低い川内だと重く感じてしまうんですよ。」

 そう明石が解説をする脇で、そのことを意に介さないでその場でクルッとまわったり、パンチやキックをする那美恵。それを三千花や提督らは2m程彼女から離れて眺めている。
「そうなんだー。まーでも艦娘としての仕事に支障はなさそうかな〜」
 那美恵のパンチやキックではその筋のプロさながらにシュバッ!という風を切る音がハッキリ聞こえる。三千花はそれを耳にした瞬間に2mからもう少し後ずさりながら言う。
「なみえ……あんたどんだけ恵まれてるのよ。それにしても、艦娘の制服じゃなくて学校の制服で動いてるのっておかしく見えるわね。」
 言っておいてハッと時雨たちのことを思い出した三千花だったが、幸いにもその場に居るのは彼女らの友人五月雨だけだったので、彼女をちらっと見てホッとする。五月雨はなんで三千花に見られたのかよくわかってない様子で、その視線に気づくと三千花に会釈して微笑みかえした。

「ちなみに……今の那美恵ちゃんと川内の同調率は、91.25%です。もうふつーーーに合格してて当たり前の数値ですね。那美恵ちゃんすごいですね〜」
 明石は艤装のチェック端末で確認しながらウンウンと感心している。
 もう十分だとして那美恵は艤装を外す旨明石に伝え、同調を切断して艤装を外した。外し終わった後、彼女の頭にふと考えが浮かんだ。