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子犬のワルツ。

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一見色素が薄くなったくらいであまり変わらないように見える彼があまりにも咳き込んで具合が悪そうなのは無理もないことです。西と東とでは経済の格差があまりにも大きかったですからね。
だから、間もなくベッドの住人になるだろうことは目に見えてました。



・・・・一応、隣人ですし、腐れ縁ですので、お見舞いに行ってきたときのことです。



「どうですか、具合は。諸国から死んだかと思われてた割に元気そうですね」
「やっぱりそうかよ・・・」
「やっぱり・・?」

彼が言うには私が来る少し前にあのアントン・・・アントーニョが来ていたそうです。
アントーニョはギルベルトを見るなり『帰ってきた言うからロヴィーノと墓参りに来たんやけど、生きてたんか~。よかったなぁ、ギルちゃん』と快活に笑っていたそうです。
・・・彼も相変わらずですね。

「お前じゃねえだろうな、俺が死んだとか言ったの」
「違いますよ、このお馬鹿。・・・普通、無事に帰るだなんて思いませんよ。今回のことだって、合併と言うより吸収に近いんですから」
「そ・・・っか・・・。・・・お前も、俺が死ぬと思ったか・・・?」
「まさか。アントンと一緒にしないでください。貴方は殺したって死なない国でしょう?」
「ッ・・はは、そういや・・そうだな」

不意を付かれたように渇いた笑いを浮かべるギルベルトを横目に私はもう随分昔の戦いを思い出していました。
基本的には私と彼の戦いでした。でも同盟国が多かったこちらと、資金援助しか得られなかったあちらとでは多勢に無勢。決着はすぐに着くと思われました。
それでも、彼は最後まで生きていました。もう少しというギリギリのところで、私の同盟国の1つの女王が死去。その息子があちらに加担して、戦況は変わりました。

これが、ギルベルト・・かつてはマリアの名を戴いた軍事国の力なのかと思いました。
だから死ぬなんて思ってませんでしたよ。
ただ・・。
その強国が今やベッドの住人かと思うと、少し切なくなるだけです。

まあこんな話彼には関係ないですし、適当なところで話を切り替えて、本題に入ります。これがこの訪問の本当の目的といいますか、そんな感じのところです。

「ところで、貴方、エリザにお礼はしましたか?」

すると彼は急に眉間に皺を寄せて、怪訝そうな顔をして見せました。
自然珍しく少し小さめの声で彼は言ったんです。

「なあ・・・国境開放したのは・・アイツでいいんだよな?」
「? はい。そうですけど」
「・・・だよなぁ・・」

彼曰く。
エリザが先日お見舞いに来たとき。

『おい、エリザ』
『・・・病人じゃなかったら殴ってるわよ』
『殴るなよ!!話しかけただけじゃねえか!』
『名前呼ぶなんて何よ気持ち悪いわね』
『酷くねえ!?あの・・・その、なんだ・・・』
『何、さっさと言いなさい」
『国境、開放してくれたの・・・お前だろ?その、ありがとう・・な』
『・・・・』
『エリザ?』
『・・・何言ってるの?知らないわよ。そんなのあるわけないじゃない』

と言われたそうです。
私はなんだかおかしくて笑いを堪えていると目の前の彼が更に首を傾げて言います。

「だって、お前んとことハンガリーの国境だろ?お前じゃなきゃ・・アイツだよなぁ・・」
「ええ、そうですね。ふふ」
「・・・何がおかしいんだよ」
「いえいえ、何でもないんです。大丈夫ですよ。今、憂うコトは特にないですから」
「そーかぁ?」

疑うようにこちらを見る視線を避けて、では失礼します、と部屋を出る。
廊下に出て、階段を下りて、一階のリビングを通るときにルートヴィヒに見つかりました。

「ん、なんだ、ローデリヒ、もうかえ・・・・何がそんなにおかしいんだ・・?」
「いえ。なんでもないですよ?・・ふふッ」
「まあ・・何もないならいいが・・・兄さんと話してきて、お前が笑ってるなんて珍しいな」
「・・・そう言われれば、そうですね。あの人の前で笑ったのなんて久々です」
「少しは、わだかまりも解けたか?」
「生意気ですよ。まだまだ子供の貴方が口を出すことじゃありません」

言い切ってリビングを通り抜け、玄関から出る。
彼にこんな物言いをしたのも懐かしい。本当に彼が子供だった時以来でしたね。



作品名:子犬のワルツ。 作家名:桂 樹