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女体化ジルヴェスターの災難~ドレッファングーアの暇潰し~

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罪と罰 4



 「忘れてしまいたかった。只、弟として其方を慕っていたかった。その癖、そうなる自分を恐れた。
 …私は、何処にも行けない。そう思っていたら、未来に来たのだ。時の女神、ドレッファングーアの導きの元に。」
 フェルディナンドの手が、ジルヴェスターの頬に触れる。
「私達を連れてきたのは、其方等の時空のドレッファングーアだ。彼女は…、有り体に言えば、暇潰しの為に紡いだ糸を遡り、偶々選んだ人間とその周囲を招待した。
 時の東屋で、過去から連れ出された時、彼女は私に一方的に語り掛けた。
 自分にとって過去だが、私にとっては現在、故に私がこの未来を紡げるかは分からない。そして未来で過ごした記憶は残らない。未来から過去へ持ち込めるモノは無い。」
 言い聞かせる言葉は淡々としているのに、ジルヴェスターには悲痛に聞こえる。
「過ごす時間は約3日。過去に戻る時には時の東屋での合図。全員が集まれば、強制送還。…正しく神の暇潰し。人間にとって何の意味もない。」
 動かない体はフェルディナンドを警戒しなくてはならないのに、どうにもそんな気になれない。
「だが、もし、過去から持ち込んだ何かを、この未来に捨て置くなら…、僅かだが例外を生める。
 捨て置く事を決意しただけで、過去に還った瞬間からそんなものを持っていた事さえ、忘れる。
 そうして捨て置く何かの為に歪めた時空の壁を通し、僅かながら未来のモノを持ち還れる。決して等価交換では無いそうだが。」
 薄っすらと浮かべられた笑みで泣いている。
「どの道、これは夢だ。一時の夢。ならば…、夢の中くらい、其方と想いを遂げたい。だから私は、」
 ぐっと言葉を切って、フェルディナンドは続けた。

 「だから私はこの想いを置いていく。」

 自分に言い聞かせている様にも聞こえる。
「何もかも忘れるだけじゃない、再び想いが生じる可能性も捨てる。何もかも、未来に、其方の中に置いていく。」
 自身に暗示を掛けている様に聞こえる。
「この魔術具の使用直後は、身体が変化した事で、魔力が正しく動かない。枯渇していると身体も感覚も錯覚する。
 …もし魔力の釣り合いが取れているなら、相手の魔力に圧し切られ、染まりやすい分、妊娠もしやすい。」
「!!!?」
 流石にジルヴェスターも、危機感に襲われる。力の入らない腕を震わせながら、何とか持ち上げるも、それ以上はどうにもならない。
「ジルヴェスター…、」
「まっ、」
 その手を捕まれ、瞳に魔力の揺らぎを見付ける。

 「いっそ孕め。」

 直後、現の証だと言わんばかりの、決して誤魔化せない衝撃がジルヴェスターを襲った。