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逆行物語 裏五部~愛と死のロンド~

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ジェルヴァージオ視点~テルツァとクインタ~



 それからはより多忙になった。ジルヴェスターを監禁する為の土地を確保し(地図では悟られぬ様、境界線を新たに引いた、クインタ1人の魔力で余裕に賄える礎程度の広さ)、離宮(機能的な事情から、1度は壊したアダルジーザそっくりになった事に後々、お互い苦笑い)に生活基盤(関わる人間は契約魔術で縛った)を整えるのを秘密裏に行いながら、普段と変わらぬ執務を行う。
 一方、クインタは王命による、アーレンスバッハへの婿入りと言う形で、ゲオルギーネに取り込ませる。
 エーレンフェストを不利にする為、その土地をアーレンスバッハに吸収させる前準備に欠かせない戦力として、理由付けた。
 クインタの名を捧げられていると言うと、完全ではないが、一応の信用を得たらしい。
 クインタはゲオルギーネの違法な他領内政侵略の証拠を集め、私の元へ持ってきた。当然だが、領地の執政はツェントの承認の元で行われる。違法な内政侵略は充分に反逆である。
 証拠が集まった段階で、領主一族含む、アーレンスバッハの貴族を捉え、アーレンスバッハは廃領、事前の計画通り、元・王族に治めさせる運びに。
 そのどさくさにクインタと、クインタに名を捧げる部下を高みに昇った事にした。
 クインタが私と近い血筋の女性と先代のアウブ・エーレンフェストとのであり、故にエーレンフェストは私の身内であると発表し、ジルヴェスター・エーレンフェストを呼び出した。
 2人だけで話したいと側近を全員排除した為、ジルヴェスターも特に疑いなく従い、護衛騎士たるカルステッドを外し、私の後をついてきた。
 予め用意していた席に座る様に命じ、私自らが飲み物を準備し、毒味兼ねて半分程飲んだ後で、ジルヴェスターに下げ渡す。
 当然、口にしない選択肢は無い。ジルヴェスターは同じ様に残りを飲み干した。睡眠薬入りだと知りもせず。
 ランツェナーヴェ製であるその睡眠薬は、既に慣れている私には効かぬ量だが、初めて口にしたジルヴェスターはあっと言う間に意識を失った。
 隠蔽の術で控えていたクインタが、ジルヴェスターを抱え上げると同時に、同じく隠蔽の術を解いたユストクスとエックハルト、それからアーレンスバッハのマント姿の騎士の遺体が数体、現れた。
 遺体を適当に放置し直すと、ユストクスが魔術具を発動し、派手な爆発が響く。待機している事情通なラオブルートだけでなく、間も無く大勢が駆け付ける。
 その前にエックハルトが、私に向かってシュタープ製の剣を奮う。致命傷ではない、深い傷が刻まれる。膝を着く私の手にも、シュタープ製の剣。
 そのまま3人(こう言う場合は4人か?)は隠された離宮へと姿を消した。
 アーレンスバッハの残党に襲われた、話の最中だった為、遅れをとった、ジルヴェスターと逸れた、それでも数人は倒した、と言う作り話を疑う者はいない。
 無論、混乱が過ぎた後で気が付き、蒸し返される可能性もある為、アウブを奪った代わりにグルトリスハイトを授ける事にする。と、言うのも始まりの庭でヴィルフリートがシュタープを会得しているらしいからだが。

 …後にツェントの影と呼ばれる事になるアウブ・エーレンフェストの始まりとなる、八代目のヴィルフリートは私に告げた。
「…私は…、叔父上がエーレンフェストの土を踏むには遠い高みで、幸せに眠る事、祈り続けます。」
 ジルヴェスター・エーレンフェストの死亡が確認された、と知らせが来たのは間も無くの事、隠し部屋等の登録が消えたそうだ。
 …大方、メダル廃棄をしたのだろう。私は以前、クインタが設置したと言う、真なる礎へ至る道の魔術具を無効果する銀の布を、エーレンフェストへと送った。程無く、その魔術具と共に銀の布が送り返された。