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逆行物語 真三部~麗乃=マイン~

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フェルネスティーネ



 会談がキリの良い処で終わり、解散となる。私は気になった事があって、フェルネスティーネの後をついていく。
 不思議だった。神が人の夢に降臨するなんて、聞いた事が無い。カーオサイファ様だって、ユルゲンシュミットに降臨するには、人の肉体を借りるか、時を止めるか、って言ってた。夢に降臨出来るなんて言わなかったし、第一、本当にそんな事が出来るならユルゲンシュミットの崩壊なんて、逃れる事が幾らでも出来る。…じゃあ、夢の神託の正体は何? 
 そんな事を考えていると、フェルネスティーネは隠し部屋に入っていく。もし何かあるなら、隠し部屋だろう。私はその後についていった。
 彼女は部屋の中にある椅子に座り、疲れを癒す様に瞳を閉じる。眠っている訳ではなく、物思いに耽ってるのかな、と思わせる。
 幽霊になってから、人の感情が見える様になってたけど、彼女からは揺らぎさえ感じない為(多分、カーオサイファ関係が理由だと思う)、何のヒントも無い。
 そう思っていると、彼女が瞳を開け、私を見た。私の居る方向じゃない、しっかりと私を見ている。
「……………。」
【……………。】
 互いに無言で見つめ合う。根負け(?)は私だった。
【私が見えているのですか?】
「見えていると言えば、許しを得ずに隠し部屋に入室した事を謝罪し、出ていってくれるのかしら。」
【うっ、】
 隠し部屋は個人的な部屋だから、親しくも無い人間が勝手に入って良い部屋じゃない。
「まあ、幽霊との会話なんて、ここしか出来ないから仕方は無いのでしょうけれど。」
 …要は謝罪の代わりの、済まなさそうな態度が無かったから、怒っているのだろう。
【申し訳ございません。どうしてもお聞きしたい事がありまして。】
「何かしら?」
【神々が夢に降臨するなんて、どう言う事ですか?】
「エーレンフェストの聖女の夢に、神々が出てくるのと同じよ。」
 つまり嘘だと。でもそんな歴史に関わる嘘をついて大丈夫なんだろうか? 
【神託は?】
「人の夢に、境界を越えて干渉する魔術を使っただけよ。」
【そんな魔術があるのですか!?】
「私が研究して編み出したの。私が“知識”を手にしたのは4才よ。何もしない訳無いでしょう? 未来の情報もあるのに。」
 …何となく視線をずらしてしまった。
「魔力圧縮1つとっても、“偽者”が契約魔術で縛るのだから、私は私で別の魔力圧縮を考えたのだし。
 …まあ、お陰様、と言う事も多いけど。」
 うわあ…、何か内面が暴れん坊な気がして来た。
「処で私は今、貴方に波長を合わせて、会話している。だから波長を合わせる努力を止めれば、貴方との会話は出来なくなる。

 私は私のやりたい事をする。

 貴方の意見を受け付けるのは今だけ。何か話して置きたい事や他に聞きたい事は無い? なければ波長を外すけど。」
 と、言われて私は瞳を閉じていたのは、私に波長を合わせる為だったのだと気付く。きっと何時頃からか、私が居るかどうか確認していたのだろう。

 もしかして彼女はいじめっ子気質なのだろうか………。

 私は横に首を降り、部屋から出た。