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逆行物語 第六部~貴族院のお茶会~

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ディートリンデ~絵師誕生~



 読めば読む程、深みに嵌まる世界…。抜け出す事等、もう出来ません。思い付きもしません。
 物語に浸っている間、私はとても幸せでございました。荒ぶる想いを頂いた植物紙にぶつけます。
 私に絵心があるかどうかは解りませんが、想いを描き切る為、非常に満足しています。
 毎日描いていると、上達するものです。何時頃からか、私はアップルエデン先生に自分の絵を見て欲しいと強く願う様になっていました。
 そんな頃、私の絵を見たローゼマイン様は、アップルエデン先生の書く本の挿し絵をして欲しいと言われたのです!! 私は余りの光栄過ぎる話に、嬉しすぎて、高みに昇るかと思いました。
 私は挿し絵の代金の代わりに、アップルエデン先生の本を実質、無料で手にする事が出来る様になったのです。
 更にヴィルフリート様からは是非、将来は絵師として、エーレンフェストに来て欲しいと乞われたのでこざいます。
 勿論、私に否定の気持ちはございませんでした。しかしアウブであるお父様に話をしてみなければ、許可を得れるか解りませんし、絵師として、と言うのは少々特殊でございます。
 卒業後、婚姻以外で自領より外に行く(一時の滞在ではなく、メダル登録している領地が変わる)場合は、その他領とは中央になります。
 つまり中央以外の他領に行くならば、それは婚姻以外の理由等考えられないのです。
 少なくとも私の知る限り、前例はありません。一体、どうしたものでしょうか…。
「ディートリンデさえ良ければ…、アップルエデン先生と一緒の家に住まぬか?」
「勿論、アップルエデン先生や御家族にも話を通さなければなりませんが、まずはディートリンデがどうしたいかが重要と思います。」
 2人が提案した事は、婚姻と言う形で、エーレンフェストに来てはどうか、と言う事でございました…。
 果たしてそれは…、私とアップルエデン先生が共に住む、つまり、アップルエデン先生の夫に嫁ぐ、と言う事でありました。
 アップルエデン先生こと、トルデリーデ様は騎士団長、カルステッド様、と言う方の第二夫人と言う事でございました。
 そして第一夫人はエラントゥーラ先生こと、エルヴィーラ様…。もう既に作家をお二人も娶っておられるのです(作家になったのは数年前だそうですが、執筆活動に御理解が深いのは疑い様がありません)。
 更に昔は第三夫人までおられたそうですが、その方は10年程前に、既に高みに昇っておられ、現在、その座は空いているそうです。
「アーレンスバッハの元・領主候補生にエーレンフェストの上級貴族の第三夫人と言うのも失礼かも知れぬが…。
 エラントゥーラの作品と違い、アップルエデンの作品は、一部の熱狂的な支持者以外にはまだ理解が進んでおらぬ。現状況では第一夫人よりも第二・第三夫人の方が活動しやすいと思う。」
「勿論、無理強いは致しません。ディートリンデ様がお嫌ならば、このお話は消えますから。」
 何を迷う事があるのでしょう。これ程素晴らしい申し入れはございません。

 私はこうして、カルステッド様と婚約し、卒業後、第三夫人となるのです。