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『掌に絆つないで』第一章

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Act.05 [飛影] 2019.4.7更新


何か、違和感がする。
トーナメント会場で蔵馬と再会した黒鵺という男は、ほかの誰とも違う異質な妖気を持っていたように思う。幽助は、奴の態度にただ腹を立て、そんなことには気づいていない様子だった。二人のもとを離れたあとも、一度振り返り、舌打ちしていたくらいだ。
蔵馬をとられたような気分でもいたのだろう。あいつはここのところずっと、蔵馬に依存気味だ。
幽助につきあうのもそこまでにして、飛影はいつもの木の上でくつろぐことにした。

トーナメントは受付が開始しても、試合はすぐに始まらない。
誰がやっているのか、飛影が興味を持つはずもないが、予選を組んだり場所を決めたりするのに時間がかかることくらいは知っていた。
いっそのこと参加者全員でサバイバルゲームでもすればいい。
開催が待ち遠しい彼の本音だった。
そういえば、まだ躯の姿を見ていないな。
しばらく、飛影は躯に会っていなかった。彼女は未だに強敵で、追いついても追いついても、また突き放される。トーナメント受付開始までの期間、彼が躯を避けることはもはや習慣になっていた。
毎回、受付日以降は顔を合わせていたが、今回は受付会場で躯を探すこともなくここへ来た。
あいつのことだから、今頃オレを探しているだろうな……。顔くらい、見せてやるか。
額の布をはずし邪眼を開いて、躯の姿を探そうとしたが、躯より先に蔵馬の姿を見つけた飛影は、つい無意識にその後ろ姿を追っていた。

まだ黒鵺と二人でいるようだ。トーナメント会場を離れ、どこかへ向かっている。
蔵馬は先に立って歩き、その後ろをついていく黒鵺を振り返っては、微笑む。
飛影は蔵馬が時折見せる甘ったるいその顔が、苦手だった。
『幽助と出会ってから貴方は変わった』
そう蔵馬に指摘されるたびに、「貴様ほどではない」という言葉を何度飲み込んだかわからない。
人間となり身を潜めていた蔵馬は、穏やかを装いながら、それでもピリピリと冷たい妖気を隠しきれていないような妖怪だった。飛影は、彼のそんなところを気に入っていた。
しかし幽助と出会ってからは、自分と幽助の戦いに割って入り雪村螢子を救ってみたり、霊界の思うように幽助を手伝って戦うことを、好んでさえいた。
妖狐の姿のときの蔵馬は、もっとぞくぞくさせるような冷たい視線をくれる。言葉遣いや態度も違う。身体が入れ替わることが、どういった心境の変化をもたらすのかは彼にはわからなかったが、甘ったるい笑顔を見せつけられると、妖狐の蔵馬がもっと前面に出てくればいいのにと、飛影はときどき思うのだ。

蔵馬たち二人は会場から遠く離れた森の奥へと進んでいた。
どうやらそこは、蔵馬が宝を隠していた場所。
飛影の中で好奇心が渦巻いた。伊達に盗賊時代を過ごしてきたわけではないから、蔵馬が手に取る古めかしい壷の色艶や宝石類の細工を見れば、相当価値の高いものだとわかる。
今でこそ盗賊業からは足を洗っているが、昔の血が騒ぐという気分を味わいながら、彼は邪眼の先を追い続けた。
蔵馬はまた甘い笑顔を浮かべながら、宝に手をかけては、しきりに黒鵺に話しかけている。
そして、雫をかたどったようなヘッドに紅い宝石が埋め込まれたペンダントを、黒鵺に渡していた。
受け取った黒鵺は蔵馬を見つめ、蔵馬はそれに微笑みをもって応えた。だがその蔵馬の笑顔は、どこか上の空で、違和感を感じずにいられない。
……何かは知らんが、どうも気にいらん。
とはいえ、具体的に何がというわけでもない。飛影はそれ以上、蔵馬たちを追うのはやめて、躯を探しに出かけることにした。