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悪魔言詞録

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126.魔神 アマテラス



 ああっ、このくそ忙しいのに!

 おい。この忙しいときによくも呼び出してくれたな。おかげでわらわは休むことなくずうっと働き詰めだ。もう少しばかりタイミングを見計らって召喚することはできぬのか、そなたは。

 ああ、いや、こちらも言い過ぎた。謝らなくてもいい。召喚してくれたということは、頼りにされているという証でもあるわけだしな。それに、今の日の本の中心都市がピンチなのだから、わらわが動かぬというのでは筋が通らんというものだ。

 普段からそんなに忙しいのかって? そりゃ、わらわはこの日の本の主神だからの。いろいろな面倒ごとを背負い込んでいるのだ。坂東の一都市に異変が起きていることは前から把握しておったが、だからといって他の地の安寧を蔑ろにしてもいいというわけではない。それに、わらわは機織りや農業の神でもあるし、さらに太陽神という役目も持ち合わせておる。か弱い女の細腕で主神という重い重責を果たしつつ、先に挙げた神格という役割もこなし、その合間を縫ってどうにかこうにかそなたの召喚に応じることができたのだ。今ここで言葉を交わしていること、それ自体が奇跡といってもいいほどなのだ。少しは感謝もするがよいぞ。

 でも、すごく強いんだから、か弱い女の細腕とか言わないほうがいい? うるさいのう。神なんぞをやっておると、そんな気分になるときもあるのだ。この国の神々は一癖も二癖もあるやつらばかりだからの。あんなのを束ねていると、いつ裏切られるか不安で仕方がない。ついつい心細くもなって女を出したくなってしまうときもあるのだ。

 ん? だから引きこもっちゃったんですね、だと? おい、その話はするな。あれはわらわも悪かったと思ってるんだから。でもアメノウズメの舞、久しぶりに見たくなったな。そなた、あいつはここに呼んではいるか?

 わらわを呼び出すイケニエにしちゃった? そうか、あいつの踊りを見れば、この忙しさもつかの間忘れられるのになぁ。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔