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悪魔言詞録

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155.鬼女 アトロポス



 まったく! お姉さまたちはいっつもそうなんだから!

 クロトお姉さまは自分の苦労をアピールするのが好きなんです。もちろん長姉ですから、いろいろあったのは事実でしょう。私たちをかばってくれたこともあったでしょう。でも、私たちも温室でぬくぬく育ったわけでは決してないのです。私たちも苦労はしていますし、姉の至らない部分をこっそり裏でフォローしているんです。

 ラケシスお姉さまは頭脳に自信を持っています。頭がいいのは事実なんですが、いつも分析どまりなんです。なかなか行動を起こさず、誰かが動くのを待っている。今回だって召喚主さんからクロトお姉さまのお話を聞いたあと、この私が話し合いの場を設けたんですよ。3人で話し合いたいって自分で言ってたくせに。

 毎度毎度、こうなんです。クロトお姉さまはまた自分だけが苦労するって言ってあまり動きたがらないし、ラケシスお姉さまは考えてばっかりでやっぱり動かない。結局、尻拭いはいつも末娘のあたし。

 お仕事だってそうですわ。お姉さま方は2人とも自分の仕事が一番、大変だと思ってらっしゃる。でも、最も残酷な所業である糸を断ち切るという作業は、他でもないこの私の担当なんです。そういった具体的な「実行」をお姉さまたちは絶対にやらない。少しは末っ娘の苦労を思い知ってもらいたいものですわ。

 でも、オベリスクでのチームワークはすごかったし、なんだかんだ3人が3人をちゃんと評価してるんじゃないか?

 うーん。まあ、クロトお姉さまはとてもお優しいので、回復魔法のタイミングとかもとてもうまいですわね。ラケシスお姉さまもいろいろと観察して分析してるので、使う補助魔法でそれとなく相手の弱点を示唆してくれますわ。
 そういう意味ではとても素晴らしい姉たちなのですが。やはり、長く一緒にいると不満もたまるのかもしれません。

 でも、世の姉妹兄弟もきっとわだかまりを抱えながら、何とかやっているのでしょうねぇ、ふぅ。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔