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悪魔言詞録

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119.魔獣 スパルナ



 あぁ、どうも……。

 …………。

 ずいぶんおとなしいんだなって? いや、おとなしいっていうか。まあ、いろいろありまして。
 え、そのいろいろを教えてくれ? ……面倒くさいなあ。でも、召喚主さんには知っておいてもらったほうがあとあとやりやすいか。じゃあ、ちょっとばかり時間をください。

 もともと、私スパルナは『美しい翼を持つ者』の意味なんですけど、これ、見た目だけの話なんですよね。なんで見た目だけかというと、私、この状態の時はまったくやる気がないんです。私はいわゆるそううつがとても激しいタイプで、うつ状態のときの私はやる気が全くなく、少しばかり翼がきれいなことぐらいしか取りえがないんです。
 そんなわけで、今はおとなしいというか、何に対しても無為で無気力な状態で、召喚されて死にたいと思ってるぐらいなんですが、少しばかり戦闘に参加するという形で準備運動をさせてもらえば、もしかしたらそう状態に切り替わるかもしれません。まあ、そのときはもうこのスパルナという名前ではなく、もっと有名な名前に変わっていると思いますけれども。

 ちなみに一口にそう状態になると言っても、良いほうに出たり悪いほうに出たりするものです。人間のそううつ病、今は双極性障害って言うんでしたっけ? と似たようなものです。あの病もどちらかというと、うつよりそうのほうが実は大変だそうですが、私も良いほうに出たときは、神や仏の乗り物となったり悪いやつをやっつけたりした時がありました。でも、悪いほうに出てしまうと、やっぱり悪いことに手を染めてしまうものなんです。とても恥ずかしいことなんですがね。

 というわけでうつの私、スパルナと、そう状態でそれが良いほうに向いている彼、同じくそうだけれど闇落ちしているあいつ。その3羽をこの受胎した空に羽ばたかせるのも、なかなかおつなことかもしれませんよ。

 まあ、私はうつなんで、正直あまりやりたくない作業ではありますけどね。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔