悪魔言詞録
107.地霊 ティターン
全く、あの主神の野郎、調子に乗りやがって……。
ああ、聞かれてましたか。すみません。恨み言を口走ってしまって。ええ、ちょっとね。あのギリシャ神話の主神。この国でも有名なあの雷神とは、俺ら、ちょっとした因縁があるんですよ。
まあ、因縁というより、直接、戦ったことがあるんです、あいつと、あいつの兄弟。それぞれ海と地獄を治めているやつらと。
最初はいい戦いだったんです。互角といってよかった。でもあいつら、裏でいつの間にかすげえものを入手してたんすよ。
主神のあいつは、その後も多用する雷のつえ。海を支配してるやつは、大地を支配できる三つまたの矛。暗くて女が苦手なあいつは、被ると姿を消せるかぶと。
ねえ、召喚主さん。そんなもんが相手に渡っていたら、こっちの勝ち目なんてないでしょう。どう考えたって無理ゲーです、こんなの。
え? 確かにそれはずるいが、そもそもそういった有利な道具を与えたのは誰かって?
うーん。正直に言うと、俺らの身内なんですよね。俺たちと同じティターン一族ではないですが、同じ母さんから生まれたやつらです。さらにぶっちゃけると、母も父のやってることに嫌気が差して、あいつらの味方をしていましたよ。そういう意味では、俺たち、初めから戦いに負けていたのかもしれないっすね。
そのようにして敗北した俺たちはその大半がタルタロスという場所に幽閉されました。その後、あいつらが治める世界が始まったんです。まあ、ティターン一族にも助かったものもいますよ。主に女性ですがね。ほら、あの主神、どスケベだから。
……まあ、でも、今さらここで召喚主さんに愚痴る意味がないことは分かっているんです。戦も根回しが重要なんです。父の行状にあきれた母や兄弟分を味方に引き入れていたあいつらの勝ちということは、今ならよく分かります。
でも、召喚主さん。今回は俺ら、負けたくねえんすよ。だから、そういう手はずは抜かりなくやってくださいな。