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悪魔言詞録

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104.夜魔 キウン



 神さまも人間と同じようなもんでさ。

 やっぱりたくさんの人に好かれたいのさ。人気ものになりたいの。しかも、こう、ただ好きってだけじゃなく、親愛の情、愛の形、より具体的なものを求めてしまうんだよな。

 で、そういったものを熱心、かつ定期的にささげる人々をこう呼ぶわけよ。『信者』って。だから、試験前だとか、何かの厄払いとかであわてて祈るやつは、神の側も対応しづらいんさ。こいつ、信心なんかなくて、ただ、今、喉元が熱いからすがりに来てるだけなんじゃないかって、考えちまうからな。

 あとさ、心のどっかで、こいつ、二心を抱いていないかってことも考えちゃうよな。熱心な信者はともかく、こっちが忘れた頃に祈ってくるやつなんかは、他が駄目だったからうちに来たのかい? ついでに、本当にうちを信じてるのかい? そんな感じで、思わず問いかけたくなっちゃうよな。

 その点、あんたはうまいよ。一神教っていうのかな。すげえものを開発したと思う。要するに浮気はするなってことだもんね。いや、それ以上か。浮気をしたくなるような他の神さまがいない世界観なんだもんね。俺がもう少しブイブイ言わせてた頃は、神さまも分業制でいろーんな役割を背負っていてさ、美の女神だったり、戦争の神だったり、何らかの季節を司っていたり、そりゃあたくさんの神格があったもんさ。でも、そのおかげで都市ごとに崇拝する神が違うとか、神同士でけんかになって、誰が美しいか人間にリンゴを投げて決めさせたりとか、いろいろ面倒ごとも多かったようだけど。

 今でも、他の宗教との間にいろいろとあるようだから、なんとも言えないけれどさ。その一神教からのおちこぼれに言わせれば、今の状態、自業自得って言葉がお似合いなんじゃないかな、ヒヒヒ。

 え? 一人で何ブツブツつぶやいてるんだって? ああ、すいません。召喚主さんに言ってるんじゃないんで、お気になさらずに。

 ……ちょっとYHVHに毒づいてるだけですから。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔