悪魔言詞録
133.鬼女 クロト
あなたには、兄弟や姉妹はいらっしゃるのかしら?
忘れた? まあ、無理にお聞きはしませんわ。でも、仮に大切な一粒種だったとしても、ご友人などから兄弟や姉妹の話はいろいろ耳にしていますでしょう?
オベリスクでお会いしたからご存じでしょうけど、私には妹がふたりもいるんですのよ。どちらもとてもいい娘なんですの。
でも、やはり、なんと言いますか……。血を分けた姉妹でも女が3人そろうといろいろあるんですのよ。
実は仲が悪かったりするのか、ですって? そんなことはありませんわ。でも、やはり長女というものは何かと貧乏くじを引きがちなところがありますでしょう。お姉さん故に我慢を強いられたりだとか、ふたりのわがままにつきあわされたりだとか。
もう少し具体的なことを言いますと、私たちの役割、どこか偏っているような気がするんですの。
長女の私は、役割として糸を紡ぎ出す必要があります。壊れそうなほど繊細すぎる繊維をよって一本の糸にしなければならないという、とても重要な仕事をこなさなければならないのですわ。
それなのに、次の娘はその糸の長さを決めるだけ。誰にでもできる、というのはさすがに言い過ぎかもしれませんが、代理で誰かが務められそうな気がして仕方がないんですの。
末の娘だって、指定された通りの長さに糸をはさみでちょん切るだけ。もちろんそれだって仕事にかわりはありませんが、どうも長女の私だけが大きなものを背負っているような気がしてしようがありませんのよ。
たしかに簡単そうに思えるけど、もしかしたら彼女らは彼女らなりの苦労があるのかもしれない、ですって?
もう、そうやってすぐ殿方は若いほうの肩を持つんですのね。こういうところも長女が損をしている理由の一つですわ。ああ、忌々しい!
まあ、思わず愚痴をこぼしてしまいましたが、それでも素晴らしい妹たちですわ。これからも末永くあのふたりとは仲良くやっていきたい、そう思っておりますのよ。