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悪魔言詞録

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98.鬼神 タケミカヅチ



 やっぱ、雷ってすげえなって思うんだ。

 まず、天からいきなりやってくるってのがすげえ。だって戦いの最中、あんまり見上げることなんかないだろう。命のやり取りをする場面でのんきに上を見ているやつなんざ、速攻で首をはねられっちまう。そんなのごくごく当然の話だ。でも、雷ってえのはそこをついてくる。上からいきなりビシャーンとそいつの脳天をめがけて急降下してきやがるんだ。次の瞬間、哀れにもそいつは黒焦げになっているって寸法よ。
 これが決まったときの気持ち良さったらないね。思わず叫びたくなるよ。もちろん、炎や氷、衝撃の魔法にもそれぞれ魅力はあるんだろうけど、俺はやっぱり雷属性が一番お気に入りだな。

 でさ、話はここからなんだ。俺ってさ、一応剣術の神でもあるわけじゃん。こう、なんていうかな。剣のほうも、雷みたいなやべえ切れ味の技を開発したいなあと思ってるんだよ。一撃、振るっただけで敵どもがバッサバッサとなぎ倒されていくような感じのやつを、な。

 なあ、おまえ、たくさん仲魔を連れてるし、これまでもいろんな奴らを率いてきたんだろう。今まで見てきた中で、ものすごい剣の使い手っていなかったか? いたのなら、ぜひ教えてくれねえかな。

 そんなやつはいなかった? そんなつれないことを言わないでくれよ。頼むよ、俺の長年の夢なんだよ。
 じゃあ、せめて開発に協力してくれそうなやつを誰か紹介してくれねえか。頭がいいやつとか、剣じゃなくともやりやおのの扱いに長けたやつとか……。

 え? そんなやつと会わせて、戦いがおろそかになっては困る? いやいや、仲魔が強くなるチャンスなんだよ。召喚主としては喜んで協力するところじゃないのー? 

 ちぇっ、分かったよ。こうなったら自分一人の力で開発してやる。最強の剣技を考えに考え抜いて、いつの日か天啓が、雷のように俺の頭上に落ちてくるのを待ち続けてやる。

 でも、その時がきても、おまえには絶対に教えてやらないからな。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔