悪魔言詞録
125.魔人 レッドライダー
いやあ。おまえ、強いんだな。
あっという間にやられっちまったよ。ほら、俺って腐っても四騎士のうちの1人じゃん。自分でもそこそこできると思っていたからさ、あえてあんな場所で待ち構えていたんだけど、なんか逆にかっこ悪い感じになっちゃったよ。えへへ。
え、あんたも強かったって? いやいや、こんなときにお世辞はよそうぜ。実力の差はやりあった者同士が一番良くわかっているもんだから、こればかりは何を言われてもあれだよ。
でも、あんたは戦争を起こさせる力を持っているんだろう。本気を出していなかったんじゃないかって?
いや、そんなことはないよ。本気も本気。っていうか、たしかに俺の権能は戦争を起こさせる力だけど、戦争を引き起こすやつが必ずしも戦争に強いとは限らないものなんよ。
おまえら人類にだってそういうできごとがあったろう? おまえはまだまだ若いから生まれてすらいなかったろうが、かつてとある国の皇太子夫妻が一人の青年に暗殺されたんだよ。で、それが世界中の国を巻き込む悲惨な戦争のきっかけになったんだ。え、世界史の授業でやったから知ってる? そうか、なら釈迦に説法だったな。
まあ、それはあくまできっかけに過ぎなくて、力を持ったやつらが裏で手ぐすねを引いていたんであろうことは想像に難くない。でも、戦争それ自体を起こすのはひとりの青年にもできるほどわけもないことなのさ。そいつが戦に強いかなんて関係ない。むしろ弱いもののほうが激情にかられてことを起こしちゃいやすい、なんてこともあるんじゃないかな。
俺の戦争を起こさせるという権能は、そんな無力な者でも持っているものなんだよな。例えるなら、最初のドミノを倒す程度の力。裏には必ず野心のあるものが暗躍している、そういうもんなのよ。
だからこの戦いも、裏に誰がいるかわからないぜ。そんなふうに少し見方を変えれば、おまえの戦いの意義も、これから進むべき道も変わってくるかもしれないな。