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悪魔言詞録

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97.堕天使 オセ



 あのときのあんたは強かったなあ、だって? そりゃあ、こっちのセリフだよ。なんせ負けたのはこっちなんだから。おかげで今でもまだ傷だらけだよ。

 でも、両手に剣を持つっていうのはなかなかない発想だし、個性的で倒すのも厄介だったって?

 ああ、これなあ。確かにこれ、強いように見えるんだが、なかなか短所も多くてなあ。最近は、得物を持ち替えようかなんて考えてるんだよ。
 だって考えても見てくれよ。両手に剣を持って振り回すんだぜ。2本の剣を上手にコントロールするのは案外難しくて、うまく相手に当たらなかったりとか、運が悪いと自分を切り刻むことだってあるんだよ。だから、楽勝なはずの戦いでも苦戦したり、戦いに勝つことができても生傷が絶えやしないのさ。それだけじゃなくて、武器の購入や手入れも2倍の費用がかかるし、目立つもんだから敵に大将格だと思われて狙われやすいことだってある。正直、損しかないんだ。

 でも、逆に言えばそれだけのハンデを背負ってここまで戦ってきて、ニヒロ機構の最中枢を任されたってことだろ、それってすごいことじゃん、か……。
 まあ、そうかもしれないけれども、正直、あの場面はかなりかませ犬みたいだったしなあ。まあ、俺は犬じゃなくてヒョウだけどな、ハッハッハ。
 ……。どうやら俺は実力だけじゃなくて笑いのセンスもねえみたいだ。こりゃあ、しばらくストックの中で傷を癒やしつつ、他の仲魔でギャグの練習をするか。地獄の大総裁がさむいやつでしたなんてことになったら、『あのお方』にも怒られちまうからな。

 何? そんな時間も余裕もない? これからすぐにボス戦に挑むから、そのときはぜひスタメンで出て活躍してもらいたい? なんだ、ゆっくりさせてくれないのか。見かけによらず仲魔使いが荒いんだな。
 まあ、敗北した俺でも頼りにしてくれるってのはありがたいことだ。ベストは尽くすことにするよ。

 でも、その後はしばらく、ギャグの練習もさせてくれよ。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔