悪魔言詞録
124.地霊 ゴグマゴグ
配下の者を束ねるってのは、難しいもんだよな。
まず、従えてるやつらより秀でてなきゃならねえ。下のやつのほうが能力が上だったら、俺が上に座ってやろうと考えちまうからな。配下の誰よりも秀でるか、秀でているように見せかけるかをしなきゃならない。なかなか大変だ。
しかも、戦で勝てるようにそいつらを指揮しなきゃならない。誰をどこに配置し、どういう役割を担わせ、しかも各々の面目が立つようにする必要があるわけだ。しかも、これを一度でも間違えたら、もう仲間は見向きもしてくれねえんだ。
そういう意味では孤独でもあるよな。上に立場に立つ、ということは、さ。
実は俺、はるかかなたの島国で仲間たちを率いていたのさ。山の上の洞窟にみんなで住んでさ、平和に楽しくやってたのよ。ほんと、楽しかった。自分がリーダー格で権力を握っていたからっていうのもあるかもしれないけど、別に他の奴らも不満を抱えている様子はなかったんだ。
でもさ。ある日、そこに人間が攻め込んできたんだ。
当然、俺たちは抵抗したさ。今までの平和な生活を守るために。でも俺ら巨人って、力任せに暴れるのは得意だけど、正直頭のほうはからっきしだろう? いや、そういう言い訳は良くねえな。まあ、ありていに言うと、俺の戦略ミスで仲間をみんな殺されちまったんだよ。
一人残った俺は、相手の偉いやつと一騎打ちをすることになった。ここでそいつを倒すことができれば、せめて一矢を報いることができる。もう必死だった。あれほど負けたくないと思ったことはなかった。本当に、本当に勝ちたかったんだ。
でも、そのとき俺の頭に浮かんでくるものがあったんだ。
仲間だった奴らの顔。鼻のでかいあいつや、ちょっと面長なあいつ、歯並びの悪いあいつ……。そんなもういない奴らのことを思い出していたら、戦いに負けて胸に刃を突き立てられていたんだ。
なあ、召喚主さん。配下の者を束ねるってのは、本当に難しいもんだよな……。