悪魔言詞録
95.外道 サカハギ
おいっ。あの店、本当に大丈夫か。
あ、おまえ、気付かなかったのかよ。さっきの店の主、ものすごい熱い目でおまえを見ていたぜ。
ああ、いつも良くしてもらっているからな、そりゃあ、見る目も変わるだろうって……。何言ってんだよ、おまえ。そういうことじゃないって。口調でも分かるだろう。あいつ、間違いなく女より男のほうが好きなタイプだぞ。
それもなんとなく知ってたって……。そんな安心しきってて大丈夫かよ。ぼんやりしてたらそれこそいきなり襲われっちまうぞ、それでもいいのかよ?
断っても話を聞いてくれないようなら手加減して戦うって、随分悠長に構えてるなあ。本当にそんなんでこの俺を倒したんかよ。本当にこんなやつに俺はコトワリを打ち立てるっていう夢を奪われちまったのかよ。なんだか自分が情けなくなってくるわ。
あ? でも、店主との関係を悪くして、道具類やマガタマを買うことができないで、悪魔にやられてしまうほうがまずいだろう? うーん。そりゃまあ、確かにそうだけどさ。だからって、色目を使ってくる同性のマネカタ店主にまで、無理に愛想をよくする必要はないだろう。
でも、よくよく考えてみれば、この受胎後の世界はもともと変な人が多い? よく分からないことをしゃべる思念体や、風変わりな言動の悪魔、変わったマネカタも多いし、正直、俺もおまえもかなりの変わりもんじゃないか、だって?
うーん。まあ確かに俺はマネカタの間から爪弾きにされていたし、マガツヒのためとはいえ同族を殺していた変人だよ。でも、そんな俺でも同性愛者のお相手はごめんだね。まあ、男が好きな男がいること自体は否定しねえけどさ。
でも、ああいうマネカタやおまえみたいなマネカタがいて、仲魔がいて思念体がいる。そういうやつらに囲まれてなんとか生き残れてきたんじゃないかなあ、だって?
正直、そういう発想はなかったな。もしかしたらそういうところが、おまえに勝てなかった理由なのかもな。