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悪魔言詞録

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122.聖獣 キマイラ



 ライオンとヘビはわかるけど、なんでヤギなのかがわからない、ですって?

 召喚主さん、あなた、ヤギをなめてるでしょう。心の底でヤギを軽く見ているんです。それが言葉として出てきているんですよ。
 いいですか、確かにこの国では、ヤギはライオンやヘビと違って草食のおとなしい動物というイメージかもしれません。でも西洋では悪魔の象徴なんです。ほら、ちょっと前に仲魔になっていたバフォメットさんなんかは典型的なヤギの顔をした悪魔ですし、悪魔を崇拝する者がヤギの仮面をよくかぶっていたりするんですよ。あっちの国々ではヤギはそんな扱いなんです。
 それに、ああ見えて野生のヤギは結構凶暴で、ニンゲンを見ると突進してくるものもいたりします。家畜になっているものだけを見てヤギを知った気になっていたら痛い目を見るかもしれませんよ。それに、召喚主さんはヤギを用いた恐ろしい拷問の方法があるのはご存じですか。まず拷問したい相手を縛り上げ、足裏を露出させます。その足の裏に塩水を塗りたくるんです。こうすると何が起こるかと言いますと、ヤギが塩分をほしがってその者の足の裏をなめはじめるんです。ヤギの舌はヤスリのようにザラザラですから、いつしかその哀れな者の足裏は皮膚が破けて流血の憂き目に合う、というわけなんです。それでもヤギはなめることを止めずに、血まみれの足を味わい続けます。ついには肉すらも削げ落ちて、足の骨が露出するような事態になっても、ヤギは一切やめることはせずに骨すらもねぶり続ける、そんなゾッとするような拷問が行われていたんですよ。

 ねえ、召喚主さん。あなたもそろそろヤギの恐ろしさがわかってきたでしょう? ライオンやヘビと比較しても十分な実力の持ち主でしょう?

 まあ、わかったけど、それでもやっぱりヤギってどうかなあと思ってしまう?

 召喚主さんは案外わからず屋ですねえ。じゃあ、ちょうど敵が来たのでヤギの強さを見せるとしましょうか。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔