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悪魔言詞録

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89.妖精 セタンタ



 ようし、来やがったぞ。しめしめ……。


 ああ、あなたは。うわさに聞いてますよ。元人間の悪魔の方ですよね。こんにちは。いきなりで申し訳ないんですけど、ちょっと立ち止まって僕の話を聞いてはもらえないでしょうか。

 ああ、どうもありがとうございます……すきありっ。

 や〜い。引っかかった、引っかかった〜。さすがは俺さま。やりの実力だけじゃなく策略にも長けているぜ〜。こんな大物すらもあっさりだませるんだから、このへんてこな地でも俺さまが名を上げるのは時間の問題だな!

 あれ、おまえまだ生きてたの。ふ〜ん。そこそこ強いんだね。まあ、でももう深手を負っているし、勝負はついたようなもんでしょ。ほら、すぐに楽にしてやっからいい加減大人しくしろやっ。

 …………。

 あれ? おっかしいなあ。こいつ、どれだけぼっこぼこにしても全然、死んでくれねえぞ。おい、おめえよぅ。いったいどうなってんだよ?

 え、なんだって? 仲魔がこっそりラクカジャを掛けてくれた?

 うわ、きったね〜。そんなの反則じゃん。なしだ、なし。それ抜きでもう一回戦いな。分かったか。今度こそぶっ殺してやるかんな。

 ……おい。早くそのラクカジャとかいう魔法を解け。え? 勝敗が決まるか、デカジャの魔法を俺が使えば解ける? おいおい、俺、そんな魔法、持ってねえよ。どうすりゃいいんだよ。

 じゃあ、こちらがおまえをなぶり殺しにするだけだって……。ひええ。やっ、やめろよ。まだ俺には、この世ででっけえ仕事をするっていう成し遂げなきゃならない野望があるんだ。こんなところでおっ死んじまうわけにはいかねえんだよ。

 なら、一人でいきがることをやめろ? 一人の強さにはどうしても限界があるから、仲魔と協力して戦うということを覚えたほうがいい?

 ふーん。そういうもんなのかなあ。まだ正直、ちょっとピンと来てないんだけど、とりあえずおまえと一緒に戦っていればなんか分かりそうだな。じゃあ、ついていくことにするか。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔