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悪魔言詞録

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116.魔人 ホワイトライダー



 白っていう色は、人間にとって結構イメージのいい色なんだよな。

 清純だったり、無垢だったり、神聖だったり。あと白衣の連想で医師とか看護師とか。もちろん敗北を意味する白旗とかもあるけれど、全体的にプラスの意味で捉えられている色だと思うんだ。
 俺自身も、地上を統治したり、人を殺したりするなんて書かれているけどさ、あくまで権限を有しているだけであって、必ずしもそうするってわけじゃないのさ。それどころかさ、『勝利の上の勝利』ってものを得ようとしたりしてるんだよ。

 何が言いたいかというとさ。ちょっと俺、怖がられすぎじゃねえかって気がするんだよ。他の3人はまあ、わりと具体的に怖いワードが書かれているから仕方がないと思うけど、俺、せいぜい弓を持っているとか、冠を与えられているとか、その程度の描写なのよ。銃がある今の時代、弓なんてそんなに怖くもないだろうし、冠じゃあ人は殺せないよ。

 そりゃ、まあ本気を出せば俺もそこそこはできるのよ。それは一度戦った召喚主さんなら分かってもらえると思うけど、その本気を人間にも行使するかどうかっていうのはまた別問題さ。

 そう考えると、人間ってのはどうも悪いほうに悪いほうに考える癖があるんじゃないかなあ。白いイメージで、冠を持って、『勝利の上の勝利』を得ようとしているものだぜ。ここだけ見りゃあさわやかなイケメンの可能性だってあるじゃん、まあ、さわやかでもイケメンでもないけどさ。
 結局みんな、封印だの、災いだの、死の天使だのって言葉に惑わされ過ぎなんだよ。こんなの、動画のサムネとか文章のタイトルと変わらないのよ。召喚主さんも見たことがあるだろう? 『99%の人が知らない〇〇になる方法』なんてサムネだとか、明らかにタイトルを過剰に盛ってるなっていう記事だとか。

 そういうノリで文献に書かれちゃったもんだから、気まずくて人前に出れなくなっちゃったって悪魔、結構いるんじゃないかなあと思うんだ。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔