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悪魔言詞録

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92.鬼女 ヤクシニー



 ああ……、おまえか……。うん……。よろしくな……。

 …………。

 …………。

 え、ああ。なんだ。

 やけに無口だが、やはりあのときの裁判での戦いを気にしているのかって?

 いや、別にあのときのことはもういいんだ、全然気にしてないよ。でも、私はもともと無口なほうだからさ……。

 だけど、あのときとても強かったし、戦いのコツとか聞いてみたい?

 うーん。そんなことを言われてもな……。戦い方のコツなんて人に教えたことなんかないし……。

 強いて挙げるとすれば、こう敵とがーっと間合いを詰めて、バーンと一発なぎ払って、どーんと突き崩して、体制を崩したところをバッと馬乗りになって、自由を奪ったところを上からメチャメチャに切り刻んで、特に喉笛や心の臓を切り刻んだりしていけば、いつの間にか決着が付いている感じかな。

 ……やっぱりあんまり参考にはならねえよな。ごめんな、私、口下手なせいかあんまりこういうの説明するのは得意じゃないんだよ。
 それに、よく考えたらあんたは、一度、私に勝っているじゃないか。負けたやつの話を聞いたってあんまり意味はないだろう。

 え? あと、まだ話を聞いてみたい仲魔がいる? キクリヒメ? ……ああ、あいつが私に一体何のようがあるっていうんだ?
 なに、最近お肌が荒れちゃって仕方がないから、ぜひ私にその美しい肌を維持する方法を教えてもらいたい?
 いや……、そんなこと……、きれいどころの地母神からそんな質問されるなんて思わなかったな……。
 ……正直、大したことはしていないんだけどさ。多分、あいつ、サポートや回復が得意だから、普段ちょっと運動が不足してるんじゃないかと思うんだよ。だからもう少し通常攻撃の比率を増やして、体を動かして、少し汗をかけば、肌荒れや吹き出物なんてすぐ引っ込むと思うな。

 ……でも、こんな口下手な私でも、他のやつから教えを請われることもあるんだな。なんか、話すのがちょっと楽しいと思えるようになってきたよ。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔