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ワクワクドキドキときどきプンプン 3日目

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6:天元



 不満げな錆兎たちに笑いかけつつ、情報がたしかなら十中八九冨岡自身で当たりだけれどと、宇髄は内心で独り言ちた。
 けれども口に出したりはしない。とっとと撮り終えて買い物行くんだろと、物言いたげな錆兎に手を振りうながせば、前田が我が意を得たりとばかりに乗ってきた。
「そうですよ。カメラマンもきたことですし、早く撮りましょう! ほらほら、みなさん位置について! 村田くん、レフ版持って!」
「えっ!? な、なんで? 俺、主役だよな!?」
 ヒロインだと義勇を紹介されたきり蚊帳の外に置かれていた二人組を、前田が急かす。チラチラと遠巻きに義勇を見ながら、顔を赤くしてこそこそ話していた二人組の内、やたらめったら艶々した髪の男が、前田の声に眼をむいた。
 こいつが主役かと宇髄が村田に目を向けると同時に、錆兎と真菰も、宇髄と同じような表情で村田を見ていた。考えることは一緒なのだろう。
 よく知りもしない他クラスの生徒に言うのもなんだが、たしかに義勇と並んだ絵面を想像すると、子供たちに囲まれる義勇にくらべ見劣りするというか……地味の一言。見る者全員の視線が義勇にしか向かなそうだ。
「あ、台本変えますから。村田くんとヒロインの絡みは全カット。回想シーンはこの子たちと戯れるヒロインで統一します」
 にべもなく言って村田にレフ版を押し付ける前田には、まったく躊躇も罪悪感も見当たらない。本当にブレないなと、いっそ感心するほどだ。
 レフ版を抱えておろおろとしている村田には悪いが、さっさと始めてほしいのは宇髄も同様だ。錆兎たちを撮影で引き留めてもらえれば、一人で動くこともできる。
「どうしても気になるなら、俺が見てきてやっから。それならいいだろ?」
 さり気なく錆兎たちに向かって言った宇髄に、錆兎の眉がかすかに寄った。探る視線に、察しがよすぎるのも困りものだと思いつつ、宇髄は表情を変えずに煉獄へと視線を移した。
「もし変な野郎どもがきても、おまえ一人で楽勝だろ? 煉獄がいりゃこっちは十分。違うか?」
「……俺を信頼しての言葉なら無論と答えるが」
 なにか別に思惑があるんだろう?
 周りに聞こえぬよう囁き声で言う煉獄もまた、宇髄の言葉の裏側を察したというのなら、宇髄としては眉をひそめるしかない。
 威張れることでもないが、たやすく本心を悟らせぬことには自信があった。それなのに、今やこのていたらくっぷりだ。いつの間にやら俺も、このほんわかとした一同に染まっていたらしい。宇髄は浮かびかけた自嘲の笑みを押し殺す。表情はあくまでも変えない。
 なんのことやら? と肩をそびやかせてみせれば、煉獄はじっと宇髄を見つめ返したが、いかにもしかたがないと言いたげなため息をついた。
「手に余ると感じたらすぐに言えよ。宇髄は一人で背負い込もうとするのがいかん」
「……了解」
 正直、驚いた。煉獄の目にはそんなふうに映っているのかと、宇髄は驚きを押し隠す。
 己だけですべてを抱え込もうとするのは、幼いころからの習い性のようなものだ。自覚したのは、キメツ学園理事長である産屋敷との出逢いによって。まだまだ子供でしかない自分では、どんなに頑張ろうとできないことはあると思い知らされた。

 やれることには限界があり、すべてを守れるはずもない。守りたい者、切り捨てねばならぬ者。守りぬくためには選別せざるを得なかった。それでも守り切れずに、すべて壊れていたことを知った。自分自身まで壊れかけて、そうしてようやく、人を頼ってもいいのだと教えられたはずなのに。

 内心で愕然とする宇髄の耳に、くくっと小さな笑い声が聞こえた。忍び笑う煉獄をいぶかり見れば、煉獄が、炭治郎たちとに囲まれた義勇を見つめたまま気負いない声で言った。
「冨岡もそうだが、俺の友人たちは、自分一人が背負い込めばいいと思いたがる厄介な癖を自覚してないのが困るな。友に頼られないのは寂しいことだとわかってもらいたいものだ」
 押し付けがましさなどかけらもない。非難する響きでもない。苦笑する煉獄は、なんの含みも持たぬ声で言う。
 やたらと声が大きくて、正義感や責任感の塊のような同級生。あえて空気を読まない押しの強さと面倒見のよさで、誰からも頼られる剣道部主将。こいつを嫌う者のほうが少ないだろうし、嫌う輩はむしろ問題のある者ばかりだろうと思える級友。それが、煉獄杏寿郎という男だった。
 宇髄だってそんな煉獄だからこそ、ツレと呼んで差し支えない関係を築いてきたのだが、はっきり友人と言われるのは、なぜだか妙に照れくさい。
 煉獄が冨岡を気にかけるのは、宇髄にも理解できる。冨岡のように深い事情を抱える者を、生来の面倒見のよさから放っておけないのだろう。冨岡の剣技を見てからは、同じ剣の道を志す者としての共感や心酔もあるに違いない。
 だが、宇髄はただの腐れ縁だ。中学入学から今まで同じクラスというよしみでつるんでいるだけの、クラスメート。友達と言い表しはしても、卒業すれば滅多に逢うこともなくなる、学生時代という名の箱庭のなか限定な友情でしかない。少なくとも宇髄はそう思っていた。
 煉獄だけにかぎらない。友達なんてそんなものだと、宇髄は明確な思考にせずとも思っていた。思っていたことを、今突然に自覚させられた。

 ああ、まったく。冨岡のことをえらそうになんやかんや言えやしねぇや。

 まいっちまうね、と、自嘲の笑みを小さく口元に刻み、宇髄は軽く手を上げた。
「……そっちも、まぁ、了解だ。ヤバかったら言う。それでいいか?」
「あぁ。錆兎にも言ってやるといい。あの子も対等な友人だろう?」
 今度ははっきり苦笑して、宇髄はまだチラチラと様子をうかがっている錆兎へと、ヒラヒラと手を振った。
「そうだな……それに、あいつには隠すほうがヤバそうだ」
「違いないな!」
 快活に笑った煉獄が、前田に「本番始まりますよ、お静かに!」と責められ首をすくめたのに小さく笑い、宇髄はそっとその場を後にした。

  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 駅近くをうろついていたなら、少なくとも冨岡の現在の住所などは知られていないとみていいだろうか。考えながら宇髄は足早に歩く。
 大柄で容姿の整った宇髄は衆目を集めがちだ。自覚もある。だから情報を集めるときには、細心の注意を払うようにしている。
 人当たりのいい会話や自分の容姿を最大限効果的に使っての情報収集は、宇髄の得意とするところだけれど、正直少しばかり自己嫌悪も感じずにはいられない。
 それらが身についた理由を考えると忸怩たる思いしかないし、感謝なんてしたいとも思わないが、役に立っているのは事実だ。こういうときに感謝より嫌悪が先立つあたりは、自分もまだまだ子供なのだと思わざるをえなかった。
 ともあれ、宇髄の得た情報と現状には、残念ながら差異はなく、手を打つには少々後手に回った感がある。それでも義勇との接触前に阻止できれば結果オーライだ。しょせんは金で動いただけの中学生ども。場合によっては腕ずくの話し合いになるのは予測済み。煉獄や錆兎には悪いけれど、できるかぎり一人で片をつけたいところだ。