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【リリなの】Nameless Ghost

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従章 第三話 襲撃(後)



「こいつら、結構やるな」

 ヴィータはビルから離脱した瞬間の隙を突いて強襲してきた黒服と金の髪を持つ魔導師、フェイトの戦い方を見て正直舌を巻く思いだった。

「はぁぁーーー!!」

 フェイトはヴィータが振り抜いたハンマーを髪の数本を犠牲にして避け、その隙を突いてバルディッシュを振りかぶる。

『フェイトはそのまま目標を足止め。アルフはその隙にバリア・ブレイクを。解除に三秒以上かかる場合は一時離脱。同じ場所に留まるな。とにかく動け!』

 アリシアからの念話の指示通りに、フェイトはそのまま大鎌の形態にシフトさせたバルディッシュを振り抜き、ヴィータの防御結界と接触させた。
 ヴィータは攻撃後の硬直から復帰しきれず、防御結界の出力に全勢力を費やすが続いて突入してきたアルフの掌打に表情には表さない焦りを感じた。

「バリア・ブレイク!!」

 接触した障壁の表面からアルフはその結界の構成式を読み取り、その構成にバグを流し込むことでそれを解除しようとする。

「ちい!!」

 ヴィータは次第に突破されていく自身の結界に舌打ちをかまし、仕方ないとグラーフ・アイゼンに命令を下そうとする。

『直ちに離脱せよ』

 アリシアの短い命令が届き、フェイトとアルフは疑問を挟むことなく全力でヴィータから離れた。
 そして、その瞬間ヴィータの障壁は小爆発を起こし周囲に魔力の残滓を撒き散らしつつそれは消滅した。
 【バリア・パージ】
 自分からわざとバリアを崩壊させることで生まれる反作用で敵を吹き飛ばす。荒技といえばその通りだが、守って攻撃するという戦法を主体とする魔導師には割と馴染みのある方法とも言える。

『相手の体勢が整うのを待つ必要はない。チャンスだ、たたみかけろ』

「分かった、お姉ちゃん」

「あいよ、アリシア。なのはを可愛がってくれたお礼はきっちりと返さないとね」

『無駄口はいらん』

 アリシアの素っ気ない返答に肩をすくめ、アルフは再び赤い鉄槌の少女、ヴィータと向き合った。
 しかし、アルフはふと何かの違和感を感じた。それは、野生の狼だった頃の危機感と言うべきもので、そしてアルフがそれを警告するよりも前に、一条の迅雷がフェイトに襲いかかっていた。

『下に避けろ!! フェイト』

 アルフより遅れること一瞬、アリシアは突然のことに反応できずその場に固まるばかりだったフェイトを叱責するように声を張り上げ、フェイトは刹那の差でそれに間に合い、まるで墜落するように地面に向かって舵を取った。

「フェイト!!」

 フェイトは避けることを考えるあまり落下することを考慮に入れておらず、アルフは何とかそれに疾空してフェイトの背後に衝撃緩衝場【フローター・フィールド】を展開し、ゆっくりとフェイトを受け止めた。

 そんな二人の様子を足下に見下ろし、その迅雷の主、後ろにまとめられた桃色の髪と騎士をあしらった甲冑に身を包む長身の女性は一息ついて剣を下ろし、その後ろで何処か憮然とした表情で自分を睨む仲間に笑みを向けた。

「押されているようだった故介入したが、無用だったか?」

 そんな桃色髪の女性の何処か挑発するような笑みに、ヴィータは「ふん」と鼻息をたて、

「別に、あたし一人でも何とかなったさ。とりあえず、無駄足ご苦労さん。助かったよ、シグナム」

 明らかに強がりと分かる少女の振る舞いに、シグナムと呼ばれた剣士は緊張を崩した。

「負傷はないようだな。だが、やっかいな手合いだな」

 シグナムはそう言ってヴィータから視線をずらし、先ほど自分の攻撃をギリギリに回避したクロノ少女フェイトの方へ目を向けた

「避けられたのか?」

 ヴィータの目にはどうやら、シグナムの攻撃にあの少女が地面にたたきつけられたように見えたようだ。しかし、シグナムは頭を振り、それを否定した。

「私もあのタイミングで避けられるとは思っていなかった。瞬間的に下に向かって避けるとは。大した判断力だ」

 ビルの谷間に落ちた二人は今はシグナムとヴィータの真下のビルの頂上に立ち、二人を観察するようにじっと睨み付けてる。
 目立った負傷は見受けられない。金髪の少女のツインテールの片方が若干短くなっているように見えるのは、先ほどのシグナムの一撃からそこだけが逃れられなかったからだろうか。

(少し悪いことをしたか)

 シグナムは女の命とも言える髪を切られた少女が何を思いながら自分を見るのか類推しながらヴィータに懐から数本の短い棒のようなものを投げて寄越した。

「今の内に補充しておけ」

 それは、先ほどからヴィータが戦闘中に激発させていたカートリッジの予備だった。ヴィータは今回の任務はそれほど長続きしないだろうと高をくくり、仲間が言うのを聞かずカートリッジの予備を持たずに出てきてしまっていた。現在、グラーフ・アイゼンに搭載されているカートリッジは僅か一発。なのはに二発使用し、先ほどのフェイトとアルフとの戦闘で一発消費していた。
 それだけ消費したにも関わらず、出来たことはなのはの戦力をそぐことだけ。蒐集も出来ず、フェイトとアルフには終始決定打を入れられずじまいだった。

「ところでヴィータ。あれをどう思う?」

 シグナムは実質二対二となった状況を俯瞰し、ヴィータに意見を求めた。

「二対二と思いたいけど。たぶん違う。こっちを監視して指示を出す奴が居るはずだよ」

 ヴィータの言葉に、自分もザフィーラも同じ意見だとシグナムは返した。

「ザフィーラには裏にいる指揮者の探索を頼んだ。ここは私たちが押さえる。準備は出来たか?」

 会話をしながらグラーフ・アイゼンのフレームを開き、都合三発のカートリッジをリロードし終えたヴィータは頷き、いつでも戦闘可能だと大槌を構えた。

「私は黒い娘を」

「アタシは犬の方だな」

 二人は足下にたたずむフェイトとアルフを見据え、獲物を構えた。

「フェイト、来るよ」

「うん。たぶんあの剣の方は私を狙ってると思う」

「そうだね。だったらアタシはあのチビか」

「一対一だと不利だね」

「アリシアは一度後退しろって言ってるけど」

「大人しく逃がしてくれるような相手じゃないよ」

「じゃあ、こっちは二対三で行こう」

 フェイトとアルフの背後に風が舞い降りる音がし、そこから二人と親しい少年の声がした。

「ユーノ。なのはは、大丈夫なの?」

 フェイトは戦闘の最中は忘れてしまっていた親友の少女のことをやっと思い出し、泣きそうな表情でユーノを見た。

「大丈夫だよフェイト。軽傷……とは言えないけど、応急処置はすませておいたから。大事には至らないはずだよ」

「そう、良かった。お姉ちゃんはなんて?」

「変わらず。極力距離を離して、一対一を避けて戦えだって。細かい指示はその都度にって言ってたよ」

「なあ、ユーノ。あんたにあのちっこい方任せてもいいかい?」

 アルフはやってきた援軍にそう要請した。

「うん、僕もそのつもりだったから」