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【リリなの】Nameless Ghost

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従章 第四話 アリシアの戦場



「少し熱くなりすぎだね。まあ、ユーノはともかく、フェイトもアルフも良く指示を聞いてくれている」

《Because all is young, your highness》(皆若いですからね、ユア・ハイネス)

「私たちに比べればね。最近は少しは喋るようになったじゃないか、プレシード」

 アリシアは懐の内ポケットから黒光りするプレートを取り出し、少しだけ微笑んだ。
 そのプレート。半年前リンディから渡されたフェイトの持つバルディッシュの実験機となったデバイスは、今となってはアリシアの良いパートナーとなっていた。
 バルディッシュ・プレシード。それがこのデバイスに与えられていた名だった。

《Because it received the repair of the ordinariness. However, it still tenses when Lord laying Raisingheart before》(一通りの修理は受けましたから。しかし、レイジングハート卿を前にするとやはり緊張しますよ)

「気持ちは分かるよ」

 アリシアは頷いた。いくらデバイス同士に人間並みの交友関係がないと言っても、レイジングハートはベルディナが四〇年間共にしていたデバイスだ。デバイスの製造年数だけで言えばおそらく、管理局内においても屈指のものだろう。最近になってある程度人並みの感情を獲得しつつあるプレシードにとって、自分とは圧倒的に年期の違う大先輩を前にして発言を控えたくなると言うことも分かる。

 デバイスが気後れするなど。デバイスマスターの資格を持つエイミィや本局の知り合いの技師であるマリエルが聞いたならどれほど驚くことか。ベルディナにせよアリシアにせよ、ある意味この二者にはデバイスに人間らしい感情を芽生えさせるような一種の才能があるのかもしれない。

 アリシアは一旦プレシードとの会話を遮断し、空を見上げた。

 アリシアはなのはとレイジングハートと一通りの会話を交わした後、なのはの身の安全を確保するため自ら指揮する立ち位置を変更し。今はフェイト達が繰り広げる戦場が光の筋としか確認できない場所に立っていた。

《The enemy swordsman, the Fate young lady and the engagement. A minute not be made that a young lady is defied by the approaching battle but bad》(敵剣士、フェイトお嬢様とエンゲージ。お嬢様は近接戦闘を挑んでおられますが分が悪いですな)

 プレシードはフェイトと敵の剣士シグナムとが戦っている様子を光点と軌跡を周囲の環境を模したワイヤーフレーム上に示す。

「やっぱり強いね、あの剣士。何とかアルフとやり合えるようにし向けてはいるけど。速いよ」

《In the companion, at the speed of great boiling Alf, will the load be heavy in that speed and the sword pressure?》(あの速度と剣圧が相手ではさすがにアルフの速度では荷が重いでしょうか)

 プレシードは戦闘よりも情報収集端末としての機能に特化するように再調整されている。それは、元々バルディッシュの試験運用を目的として制作されたため、実戦に耐えうる強度を初めから持たされていなかったと言うことに起因する。さらに言えば、実質的な魔法戦も考慮に入れられていないためその制御装置もそれほど高性能ではないのだ。
 今のアリシアがそれを考慮して必要分だけに機能を特化させた結果、相手の攻撃から身を守れる程度の強度と周囲の情報を収集しそれを処理する制御機能の二つだけに機能が制限されることとなった。

「だけど、フェイトでは防御力が足らなさすぎる。幸い、速度自体はフェイトが上だから何とか逃げながら応戦は出来てるみたいだけど。いつまで持つのか分からないね」

《The time schedule of the feild pulling-out still comes out with the uncertainness. Saying whether or not it should grope about the decisive factor slow?》(結界抜きのタイムスケジュールは未だ未定と出ています。そろそろ、決め手を模索するべきかと)

「そうだな……『F(フェイト)は三時方向に緊急回避。アーク・セイバー発射用意……撃て。A(アルフ)はそのまま敵の背後に回り込みフォトン・ランサーを牽制で全弾発射。敵の動きを止めろ、ばらまけ』……やはり決め手に欠ける」

 出力が不足している。今はまだ、敵もフェイト達の動きに対応し切れておらず、その切り札もまだ切られていない。しかし、今の状態でひいき目に見て五分五分。あの赤の少女が激発していたカートリッジを使用されればパワーバランスは崩れる。
 ユーノの方もあの鉄槌の少女の相手に全力を傾けているため、互いに連携をとるのは無理に近い。
 いや、何とか敵の動きを調整できれば個々に戦いながらも連携をとることは可能だが、果たしてあの子達にそれを期待しても良いものか。

《In time to be irresolute about, it thinks that it is not and it is your hightness.》(迷っている暇はないと思いますよ、ユア・ハイネス)

「そうだねプレシード。分かった、あの子達の命は私が引き受けよう」

 アリシアはそういって一度目を閉じ、息を吸い込みはき出し、そして瞼を開いた。

『F、A、Y(ユーノ)。返事はいい。これから私が言うことを忠実に実行してくれ。これより私たちは攻勢に移る』

 念話越しに彼らが息をのむのが分かった。今まで防戦を主体にとにかく負傷しないように相手のペースに会わせた戦いを命じていたアリシアがここに来て攻戦に移るといっているのだ。
 つまり、それは漸く敵勢力を打破する案が見つかったのか、それとも防戦では敗北の結末しか見えなくなったのか。
 出来れば前者であってほしいと戦場にいる三人は思うが、現実はそんなに甘くはないということもまた理解していた。
 それでもアリシアは宣言しなければならなかった。司令官たるもの兵の士気を上げることこそが至上義務。
 最高の作戦を立ち上げたところで兵がそれについて来られなければ、それは全く意味のないものとなるのだ。

『安心しろ三人とも。お前達が私の指示通り動けたのなら私たちの勝利は確実だ。私を信じろ、フェイト、アルフ、ユーノ』

 今は演じなければならない。アリシアは冬の寒さに包まれる夜の街の中にいながら額から汗を噴き出させ、その心臓は不快なリズムで早鐘を打つ。しかし、それを思念に乗せることはしない。
 フェイトはプレシードのリソースを全開にし、正面のモニターに都合四つの空間投影モニターを生み出しすべての体勢を整える。