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友達ごっこ (新羅の証言)

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臨也はいつの間にかクラスに溶け込んだ。そして、同時に俺や静雄をクラスに馴染ませた。一年の時、静雄はクラスが違っていたが、学年が上がって同じ組になると、瞬く間に臨也はそれまで孤立していた静雄も人の輪の中に入れてしまった。それは窮屈なものではなく、自然なものだった。静雄と俺は、鬱陶しくないタイミングで臨也と仲のいい女子や男子に話しかけられ、それに馴染んだ。
結局のところ、静雄は、俺と臨也以外とはほとんどつるまなかったけれど、普通に挨拶をされたり、普通に遊びに誘われたり、そういう「普通」を高校に入って初めて知ったんじゃないだろうか。その頃では、静雄の暴力をふるう相手は、喧嘩をふっかけてくる不良グループだけになっていた。校内だってとても平穏とは言えなかったけれど、少なくとも、静雄と臨也の間に派手な喧嘩はなかった。
俺が、「最近臨也と喧嘩しないね」と突っ込んだら、「そういやそうだな」と首をひねっていた。

「静雄、あんま臨也を信用しちゃ駄目だよ」

俺は、静雄が騙されるのを見ていたくなかった。臨也は、みんなを仲良くさせて幸せっていうような奴じゃないんだ。臨也は、きっと、君を飼い馴らしたいだけなんだよ。


夏休みが始まり、そして新学期になると、クラスからは何人かの生徒が消えていた。後に、俺はその生徒のうちの一人が、薬の売人をしている事を偶然知る。学校に売春グループがあるという噂も立ち、俺は静雄のいない時に臨也に聞いてみる。

「臨也、君、クラスメイトを売った?」
「人聞きの悪い事言うなよ。俺はちょっと刺激的な楽しい遊びを教えてあげただけさ」

臨也はニタニタ笑いながら答えた。俺は臨也を責められるような人間じゃない。別に怒りも感じなかったし、この件に関しても好奇心がうずいただけだった。

「何をしたんだい?ハッパでも売ったの?」
「違う違う。そういうのを無料で使える場所を話したんだ。一度だけなら絶対誰にもバレないっていう所をね」
「え、それだけ?」
「期待はずれって顔してるけど、そもそも俺が無理やり人をヤク中にしてヤクザに叩きうる外道だったらとっくに警察のお世話になってるよ」
「そこまでは思ってないよ。たださ、そんな噂話流して何か君に得があるの?」
「・・俺はね、観察がしたいんだ。そこへ行くか行かないか、それにハマるかハマんないか、そういう葛藤を見るのが好きなんだよ。そうやって必死に悩む人間がすごく、好きなんだ」

愛おしげに臨也は語った。

「ていうか、新羅、シズちゃんに何か吹き込んだ?やめてよ、せっかく上手くいってたのに」
「別に何も言ってないよ。臨也の勘違いじゃないかな」
「うそつき。いいさ、介入だってまったく予測してなかったわけじゃない」


季節は瞬く間に過ぎて行った。静雄は相変わらず喧嘩に明け暮れていたし、臨也と俺は、それを見ながら、たまに援護して石を投げたり、警察を呼んだフリをしたりした。校内にはガソリンの入ったドラム缶が転がっていて、静雄が数に圧されている時、臨也がその中身をぶちまけ、俺がそこに火をつけたりなんて事もあった。一見、何も変わらなかった。でも、変化は確かに起こっていた。