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蒼き琥珀

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<2>




廊下の遠くの方から、ばたばたと大きな足音がこちらに向かっている。
手にしていたティーカップを傾けていた青年が、口許からテーブルのソーサーへそれを戻す。
「───来たかな?」
「ええ、来ましたね」
向かい側の席に座ったアルフォンスが頷く。
「相変わらず、忙しい人だ」
「ほんとうに」
くすくすと笑う。
ひどく似た声音、そしてひどく似た表情で。
そうしていると、彼らはまるで姿を鏡に写し取ったかのように見える。



せわしい音は扉の前で止まり、しばしの沈黙が訪れる。
きっと、先程の足音の持ち主がそこに立ち、呼吸を整えているのに違いない。
やがてコンコン、とノックがされ、彼らは同時にどうぞ、と返す。
出迎えるために席を立ったのは、濃紺の上着を纏ったアルフォンス。
「アル、アイツが来てるって…」
開かれた扉からひょこんと顔をのぞかせたエドワードは、まだ完全に整い切れていない呼吸のまま部屋を見回す。
「うん。ほら」
アルフォンスが立ち位置をずらすと、エドワードの目に彼の姿が飛び込んでくる。
「───陛下、お元気そうでなによりです」
ソファから立ちにこやかに目を細め、青年は笑みを浮かべる。
エドワードの表情がぱあっと明るくなった。
「…アルフォンス!」
弟の横をすり抜け、軽やかな足取りで青年に駆け寄り抱きついた。






ぎゅう、としがみついてきたエドワードを、アルフォンスと呼ばれた青年も抱きしめ返す。
「───いつ、こっちに帰ってきたんだ?」
「今日の朝ですよ。…まったく、お二人ときたら」
少しだけ体を離したエドワードの顔をのぞき込み、青年はくすくすとまた笑みを零した。
「ご兄弟揃って、同じ事をなされる」
「同じ事?」
きょん、と首を傾げるエドワードに、彼の背後に立ったアルフォンスが苦笑する。
「半刻前には、弟君にも抱きつかれてしまいましたよ」
「…オマエも?」
首を巡らせた兄に、アルフォンスは小さく頷いて返す。
「だって、嬉しかったんだもん」
イヤだった?と尋ねる子供じみたアルフォンスの口調に、青年は首を横に振った。
「まさか!大好きな従兄弟達に抱きつかれて、嬉しくないはずがないでしょう?」
す、と青年が手をさしのべる。
「良かった」
その手を握りしめて、アルフォンスが嬉しそうに、ふわりと微笑する。






アルフォンス=ハイデリヒという名のこの青年は、エドワード達とは母親同士が姉妹の従兄弟で。
青年より数ヶ月遅れて生まれたアルフォンスは、偶然にも彼と同じ名前を付けられ、彼と同じように母方の血を濃く引いていた。
そのためか二人は面差しも声もよく似ており、傍目からは見知った者でないとすぐには区別が付かないほどだ。
違うのは、青年が父親から受け継いだ蒼い瞳。
そして、病弱だった母親の体質も、彼は受け継いでいた。











「…改めて。エドワードさん、アルフォンスくん」
繋いだ手を引き寄せ、青年───ハイデリヒは兄弟を自分の両腕できゅう、と抱きしめた。
「ただいま、二人とも」
「───おかえり」
「おかえりなさい、アルフォンスさん」
兄弟のそれぞれの腕が、ハイデリヒの背中に回される。
「この2年の留学で得た知識が、どれだけ役に立つかは解らないけど。この国の、ひいては二人の力になれるように、頑張るから」
「…はい」
「期待してる。───でも」
す、と少しだけ体を離したエドワードが、ハイデリヒの蒼い瞳を見上げてのぞき込む。
「オマエが元気に帰ってきてくれたことが、オレは何より嬉しい」
「うん、ボクも」
アルフォンスも頷いて続ける。
「あなたが選んだ留学先が、北方のカノーフォル王国だったでしょう?温暖なここと比べたら、気温も随分低いだろうから…風邪とか引かなかったかな、って」
「それが…実は、最初の年にちょっと引いちゃったんだけどね」
「なにーっ!?」
苦笑しながら反射的にハイデリヒが白状すると、エドワードがまず過剰に反応する。
「あーもう!だから行くなら南のサラディン公国の方が良いって言ったのに!つーかオレは行かせたくなかったのに!」
ぱたぱたとハイデリヒの背中や肩や胸元を撫でたたくエドワードの横から、アルフォンスが手を伸ばしてハイデリヒの額に触れた。
「アルフォンスさん、今は大丈夫なんですか?熱とか咳とか頭痛とか」
「やだなぁ、アルフォンスくん。一昨年の風邪を今まで引きずるわけがないだろう?」
「ちっがーう!アルが聞いてんのは今年だよ、こ・と・し!」
うがあ!と飛びかかる猫のような表情でエドワードが叫ぶと、ハイデリヒは笑って首を振った。
「解ってるって。さっきウィンリィに捕まったから、ついでに診てもらってきたんです」
「「結果は!?」」
同時に尋ね返した二人に、ハイデリヒは、やっぱりこのひと達は兄弟なんだなぁ、とこっそり思う。
「大丈夫だって、太鼓判押して貰ったよ。だから心配しないで」
そう言うと、ようやく二人は納得したらしい。
ほっと胸をなで下ろし、エドワードがアルフォンスを見上げてふにゃんと笑み崩れる。
「ウィンリィが言ったなら、大丈夫だね」
「良かった。───あー、安心したら喉乾いてきちまったな」
「待ってて、ボク淹れてくるよ」
だから二人は座ってて、とソファを勧め、アルフォンスがその場を離れた。






作品名:蒼き琥珀 作家名:新澤やひろ