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Don't cry for me Amestris

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 いつまでも頭や背中を撫でてくれる手が嬉しくて、暖かくて、泣きつかれて寝てしまうまでエドワードはそうしていた。

 翌日は朝から晴天にめぐまれ、セントラルは熱狂に沸いていた。
 正式な大統領となったマスタングは朝の就任演説の後、大監修を前に、結婚の発表をした。相手は、もはや名前を挙げるまでもない、エディだ。この知らせを受けて街には号外が乱れ飛び、夕方には、おさまらない市民が大統領官邸前に殺到する事態となり、急遽大統領及び未来のファースト・レディが揃ってバルコニーから挨拶をすることとなった。
 おっかなびっくりで手を振るエドワードは、観衆の中にデビルズネストの面々を目ざとく見つけて目を瞠り、隣にいたロイの袖を引いた。あれが自分のセントラルでの家族だ、そう教えようとしたゆえの行為だったが、中睦まじい様子として観衆には映り、さらなる歓声が上がった。
「しかし今日まで軍服というのはなんというか…」
 ドレスでもと勧められたエドワードだが、元々そんな持ち合わせはない。彼女の正装といえば長らく白いあの軍服だったから、ロイは就任演説に合わせてスーツだったというのに彼女は今日も軍服。
「しょうがないじゃん、他は普通の服しかないぞ」
 唇を尖らせるのにキスしたい衝動を抑えながら、ロイは、バルコニーからちらりと室内を振り返り、そこにテーブルクロスを見つけて側近に二言三言言いつけた。側近は心得てすぐに室内からテーブルクロスと、ついでとばかり、その上に置かれていた花瓶から白い薔薇を持ってきた。ロイはそれを受け取ると、エドワード、と呼ぶ。
「なに、…」
 振り向いたところで、ロイはばさっとテーブルクロスを広げて彼女の体を頭から包むようにした。それは見ようによっては花嫁のヴェールに見えないこともなかった。ロイの狙い通りだ。唖然としている少女の腰をクロスごと抱きしめ、彼は、軽くキスをしてから白薔薇を少女の耳に挿す。
 その一連の仕種は観衆から歓声と口笛を引き起こしたが、ロイはけろりとして手を振り返すだけだった。
「…不安になるわ…遊ばれないか」
「バッカ、男はちょっとくらい遊んでたやつのがいいっていうじゃねえか」
 真っ赤になってクロスを掴んでいるエドワードを見ながら爪を噛んだラストの台詞に、腕組みしたグリードが答える。
「でも泣かせたら殺すんでしょ」
 そんな二人の背後からエンヴィーが声をかければ、
「当然」
「当たり前でしょ」
 未だに妹可愛いが抜けない二人からは間髪いれず返ってきて、まあ頑張ってよ大統領さん、と青年は溜息をついた。
「…ま、その時は俺だって黙っちゃないけどね」
 そう、呟きながら。

作品名:Don't cry for me Amestris 作家名:スサ