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無題if 赤と青 Rot und blau -罪と罰-

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「俺は、荊の道を進もう。…それが、お前への俺なりの償いだ。そして、お前はこれから自分が手を掛けた者たちへ、国民へ、その「生」を持って償っていけ。お前を断罪するのは神でも、俺でもない。「ひと」だ」

シーツを捲り、簡素な寝巻きの裾を肌蹴る。包帯の巻かれた胸。プロイセンは自分の軍服の胸元を肌蹴ると指を這わせた。

「…お前の心臓と俺の心臓を繋ぐ。…俺の心臓はずっとケーニヒスベルクにあった。でも、お前の心臓を俺へと移さねばベルリンが割かれたとき、お前は息をすることすら出来なくなってしまう。…俺の心臓の半分をお前に、お前の心臓の半分を俺に。…この国にはお前が必要だ。怪我の半分も寄越せ。…俺はお前の半身だ」

指がずぶずぶと自分の肉を開いていく。爛れるように熱い。プロイセンは自分の心臓が引きずり出し、同じようにドイツの胸から微かに動く心臓を取り出す。自分の心臓をドイツの胸へ。ドイツの心臓をプロイセンは自分の中へと収める。プロイセンは眉を寄せ、奥歯を噛み締める。ぐっと身体の中を焼く灼熱。違和感、異物感に眩暈がする。異物を排除しようと暴れまわる胸を押さえ、込み上げて来る吐き気を堪える。ドクドクっと身体の中でのた打ち回るようにそれは暴れ、やがてプロイセンの残った心臓と融合し静まった。

「…っ、アっ…」

足元をふら付かせ。プロイセンは壁に背を預ける。思っていた以上にきつい。それでも、口端に微笑を湛え、苦痛に悲鳴を上げる身体を叱咤し、姿勢を正す。乱れた居住まいを正し、ドイツの寝巻きを調え、シーツを肩まで被せてやる。その上から心臓に触れる。指先に伝わってくる振動。血色を取り戻し始めた頬。


 ぽたり、と、

一滴、零れた血が白を汚した。


プロイセンは目を細め、微かに笑みを浮かべると、ずっと肌身離さず付けていた鉄十字を外した。それを赤く痕を残すその胸へと置く。

「…愛してるよ。ルートヴィッヒ」

もう一度だけ、別れを惜しむように頬に触れ、プロイセンは名残を振り払うように苦痛を堪え踵を返す。やがて、軋んで閉まる音に、青がゆっくりと瞬く。




「……にい…さ…ん?」




どくんっと大きく脈打った心臓。重い目蓋を開けた青い瞳は、その残像すら映すことが出来なかった。