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無題if 赤と青 Rot und blau -罪と罰-

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プロイセンを見つめ、青年は口を開いた。
「当て?」
「連合の宿舎であなたを待っている際、何度かアメリカの兵士に声を掛けられれるようになりました。大陸の方らしく陽気な正義感に溢れた青年です。…私のどこが気に入ったのか解りませんが、懐かれたみたいで…。このコーヒーもその青年がくれたんです」
アルミのカップにプロイセンは視線を落とした。
「…アメリカ兵?どんな奴だ?」
眉を寄せたプロイセンに青年は口を開く。
「…年のころは、私よりも三つ程下でしょうか。まだ、二十にはなっていないと思います。身長は私と同じくらいか少し低いくらいで体つきは精悍ですね。空軍のジャケットを着ていましたから、パイロットかもしれません。金髪に青い目をしています。明るい方ですよ。彼のそばにはすぐに子どもが寄ってくる。一緒に遊んでいるのを何度か見かけました。…信頼してもいいと思います」
「……会えるか?」
「訊いてみます。ここでは拙いですから、市街に場所を探しておきます」
ソ連のキャンプ地のテント内でアメリカ兵と会うのは拙い。その言葉にプロイセンは指を組む。

「…時間がない。出来るだけ早く頼む」

それに青年は頷いた。














 青年が用意した場所はベルリン市街の空襲で瓦礫となった中、辛うじて破壊を逃れた小さな教会だった。
 重厚な樫の扉を開き、人気のない礼拝堂を見渡し、プロイセンは幼いイエスを抱いたマリアを描いたステンドグラスを見上げる。その背とその纏った衣の色は青い。聖なる色、清らかなる者の色。…アッコンの修道会で見たあの青、そして色んな青を見てきた。あれからどれだけの時が流れたのだろう。自分の瞳は咎ゆえに赤く染まってしまった

「…如何で 我が主のバプテスマ」

プロイセンは跪き、指を組む。…祈ることを止めたのは、いつからだったか。ドイツ騎士団、プロイセンと言う名を得て、侵略者へと変わった頃からだったか。敬虔な祈りはこの身に何ももたらしてはくれなかった。すべての幸福も悲哀もこの汚れた手で自分のものにしてきた。

「苦き杯拒むべき」

神などいない。いたのなら、こんな非道は許すまい。いるのならば自分の身に縋り祈る人々を救うだろう。すべての世界から争いがなくなり、善良な人々が穏やかな日々を繰り返す日々を望むだろう。祈り続け、平等に神の祝福がすべての人々に授けられるように、この世界に生れ落ちたときから望んできた。でも、いつまでも経っても自分の望むようにはならない。この手は赤く染まり続ける。辛くなって神を信じることをやめた。それなのに、自分の口から紡がれる言葉は何なのだろう。神に祈り許しを請う歌は。…神などいないと思いながら、縋りたくて仕方がない。そうすることで楽になれるのだと思っているのか。それがひとときの慰めにもなりはしないことをよく知っていると言うのに。

「我喜びて今日よりは」 

許しを請うて何になる。今更。犯した罪は消えることはない。その罰をこの身に受けて、生きていくしかないのだ。この身がいつか土へと還るときまで。



「待たせたんだぞ!」



教会の大きなドアが開く。差し込む光が眩しい。

「主の十字架を担い行かん」

十字を切り、プロイセンは立ち上がり赤を眇めた。