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かなや@金谷
かなや@金谷
novelistID. 2154
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たまごとボール

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 野球部は大会が近いらしく朝練で早朝から山本は登校している。居残りの練習がないのは、某風紀委員長のせいだがその分早朝が早く長いというのが、このところの並中運動部のスタイルだ。
「今度、ヒバリに居残り練習していいか聞いてみるのな。あいつも練習手伝ってくれればいいのにな」
 さらりと恐ろしいことを平気で言う山本に、沢田は勿論、獄寺も青ざめている。あの雲雀を怖いとは思わないのだろうか……
「あ、雲雀の野郎で思いだしました。こいつ、どうします?」
 獄寺が指したのは、顔を上げた山本の横で丸くなっている黄色い小鳥だった。
「ん? ヒバリの鳥じゃねーか?」
 丸い小鳥が更に丸まった体を、山本の指が撫でている。あれだけ獄寺は警戒していたのに、小鳥は山本に気を許しているのか触られるがままだ。
「タケシ、オキタ」
「おっ、お前賢いのな」
 指先がくいくいと喉元を撫でると、黒々と丸い瞳を細めて心地よさそうにしている。随分慣れてるなぁ、流石山本と沢田は思う。彼の自慢の親友は、人間に動物にもモテるようだ。そういえば、山本の実家の関係で動物を飼ったことがなく憧れているのだと話してくれたことがあった。だから、こうして触るのが好きなのだろう。
「ん? 何持ってんだ? お前」
 黄色い小鳥が大事そうに抱えている何かに、山本も気がついたようだ。沢田と獄寺では動こうとしなかった小鳥は、山本が手伸ばした瞬間、パタタと飛び退いた。
 そこには白いボールがタオルの上に置かれていた。
「ボールだ、サンキューな」
 賢い小鳥は山本が無くしたと思っていたボールを見つけてくれたようだ。それを大事そうに守っていてくれたらしい。少なくとも、山本はそう思いこんだ。
 感謝を込めて小鳥を撫でれば、小鳥は胸を高く突き上げて、もっととアピールをする。それをまで指先がちょこちょこと撫で回すモノだから、ほのぼのしたそのやりとりを楽しげに沢田は見つめている。
「これ、探してたんだぜ」
 いつものように掴んだボールを軽く宙に放った瞬間、耳を付くような甲高い悲鳴が上がった。
「何だ?」
「今の何?」
「なんだぁ?」
 三人とも耳を塞ぎながら音の発生源を探すと、そこには小鳥が大きく嘴を広げ悲鳴にしか聞こえないその音を発していた。
「……は無事だぞ」
 音に掻き消されてよく聞こえないが、沢田には聞き慣れた赤子の声が聞こえた。小さな掌には先程山本が投げたボールが乗せられている。
「り、リボーン、どうしたんだよ」
 白いボールを見た小鳥は、破壊音波を出さなくなりただボールの周囲をきょろきょろと伺っている。
「山本」
「おう、ありがとな、小僧」
 小さな両手が丁寧に渡したそれを、押し頂くように山本も恭しく受け取る。小鳥は安心したように一声すると、パタタと掌のボールに飛び乗った。
 しゅたっと、赤子には思えぬ脚力でリボーンが山本の方に乗ると、帽子のつばを定位置にした緑のカメレオンがうねうねと小鳥へと近付いた。
 三人が不思議そうに見守る中、カメレオンと小鳥は何かを放しあっているらしい。鳥類と爬虫類、言語が成立しているのか分からないが会話が出来るようだ。
「なるほどな」
 レオンからの報告で納得したのか、リボーンは赤子らしくない笑みを口許に湛えた。ぞくりと沢田の体が震えるのは超直感ではなく、共に生活して彼の表情の違いが分かるようになったからだ。
「だいたい分かったぞ」
「何がだよ、リボーン」
 こんな時は悪いことしかないのだが、ついつい沢田は突っ込んでいた。






 小鳥はとても驚きました。全身の羽毛が逆立つほどの衝撃を覚えました。
 気を失っている雌の代わりにタマゴを暖めていると、雌の友達らしい二羽の雌達がやってきました。灰色の鶏冠と茶色の鶏冠の二羽です。愛しい黒鶏冠の雌を二人で囲んでいます。心配しているようです。灰色は小鳥のことを突くのであまり小鳥は好きではありません。黒鶏冠を叩いているとこも見たことがあります。雌同士のそれはあまりよく無いと小鳥は思っています。茶色はそんな灰色から黒鶏冠を守っているように見えます。
 そんな二羽が囲んでいると雌は意識を取り戻したようです。気がつくと小鳥が居ることに驚いたようですが、雌はタマゴを温めていたことを喜んでくれました。小鳥は嬉しくて胸を張りました。二人の愛の結晶なのですから当然のことです。
 雌が毛繕いをしてくれます。飛べもせず羽毛もない貧相な羽ですが、その分器用なそれでの毛繕いは心地よく小鳥のお気に入りです。
 そんな優しい雌があんな行動するとは、小鳥には信じられませんでした。
 あの雌が自分のタマゴを投げたのです。あんなに優しい雌が自分の子供にそんなことをするなんて…………
 宙に投げられたタマゴを見上げながら、小鳥は泣き叫びました。宙を舞う大きなタマゴに小鳥はどうすることもできません。
 泣き叫ぶことしか出来ない小さな自分を呪いながら、小鳥は張り裂けんばかりの勢いで泣きました。
 すると、小さな黒い個体が丁寧にタマゴを掴んでいました。あれは、黒羽の友人が一目置いている個体です。小鳥よりは大きいですが、他の鳥たちと比べて遥かに小さいです。そんな小さな個体が一目置かれているというところが、小鳥にはまた嬉しいのです。
 でも、優しいはずの雌は驚くばかりで立ちつくしています。ですが、小さな個体がタマゴを差し出すと雌はそれを丁寧に受け取ってくれました。大事そうにタマゴを抱える姿は、小鳥が思い描いていた雌そのものの姿です。
 困惑している小鳥に緑の爬虫類が近付いて来ました。レオンと名乗る彼は、小鳥に何があったのかと問いかけます。小鳥はあったこと全てを話しました。雌のことや、タマゴの事をです。
 緑の小さなカメレオンは、小鳥の話を全て聞くと、自分の主に聞いてみましょうと再び黒い個体の元に戻って行きました。
 小鳥はずっとタマゴを抱えている雌のところへ飛び立ちました。ようやく抱いてくれたのは良いのですが、これではタマゴが冷えてしまいます。大事に抱えたその上に小鳥は降り立つと、タマゴを温め始めました。






「タマゴ?」
 レオンからの報告はなんとも不思議な話だった。そもそも、鳥類と爬虫類の間にコミュニケーションが成立すること自体がおかしいというのに、それとも動物達は、人類の知らないところで共通の言語を、言語に頼らないコミュニケーション築き上げているのだろうかと。
「この子、ボールのことタマゴだと思ってるの?」
 レオンからの話では、小鳥はボールをタマゴだと思っている。それも山本が産んだモノだと思いこんでいるらしく、落ちていたそれを温めていたらしいということだ。実際、小鳥はレオンに山本への恋情も語ったようだが、それは彼等には割愛され説明されている。
「所詮、鳥は鳥なんすよ」
 ボールをタマゴに間違えるとは、そんな鳥と同レベルで闘っていた獄寺はなんなのだろうかと沢田は思う。
 確かに、山本の掌のボールの上に止まっている姿は、確かにタマゴを孵化させるポーズに見える。小鳥がボールをタマゴだと思っているのは本当らしい。
「そうだぞ。ヒバードはボールを山本のタマゴだと思っているらしいぞ」
作品名:たまごとボール 作家名:かなや@金谷