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かなや@金谷
かなや@金谷
novelistID. 2154
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世界が終わる夜に

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シブヤ




 シブヤにニンゲンの女の子がいると聞いた。
 浮かんだのはただ一人、千晶の顔だ。
 千晶だといい、千晶のはずだとシブヤを目指したんだ。
 病院も怖いところだったけど、外はもっと怖かった。現れるアクマの数が圧倒的に多い、あそこはみんな話を聞いてくれたけど。外には話が出来ない相手もいる。
 天使だ。と、露出度の高い彼女達を眺めていたら、小妖精の姉さんが声高に注意を促した。そうだ。俺、アクマになったんだ。天敵じゃん。
 今回は食らわなかったけど、ハマという怖い魔法を使ってくるって姉さんが言っている。
 逃げたり、闘ったりしながら、ぼろぼろになってやっとシブヤに辿り付けた。
 ここに居るって言うニンゲンはどうやってここに辿り着いたんだろう。
 そうだ。外に出て驚いたのは回復にはお金がかかるってことだ。驚いた。病院は恵まれていたって思った。
 なんかお金くれるな、なにに使うんだろうと思っていたけど、その使い道をシブヤで知ることになる。
 雪だるまが店をやっている。傷薬とか色々と雪だるまのアクマが販売している。マガタマも売っていた。
 ヒホヒホといっぱい買ってくれという雪だるまが可愛くて、ついつい沢山買ってしまって姉さんに怒られた。
 だって可愛いんだもん。あいつ。


 あと邪教の館というのにショックを受けた。アクマは合体できるらしい。
 なに合体ってと言ったら、姉さんが呆れたようにアクマのくせに何も知らないと言う。仕方ないじゃないか、たぶんアクマとしては自分はまだ赤子なんだ。というよりも、まだびみょーに自分のことアクマとは認めたくないんだ。
 そう言えば、俺は「人修羅」って呼ばれてるみたいだ。


 人に非ず、悪魔にも非ず、故に人修羅


 ようするに半端者ってことだな、中途半端。実に俺らしい。

 そう合体。
 なんか合体すると強くなれたりするらしい。
 まったく別の存在になるってどうなんだって思うんだけど、彼女達には別に普通のことらしい。
 いいんだよって姉さんは言ってくれるけど、なんか姉さんだけはそのままでいて欲しくて、オヤジと相談して合体をしてみることにした。
 まったく違う姿になって現れた仲間は変わらない態度をとってくれた。
 なんだか不思議だけど強くなった仲間達とニンゲンがいるって言うディスコに向かったんだ。

 千晶だ。千晶がいた。
 彼女はなんら代わりのない姿をしていた。
 よかった。女の子だもんな、俺みたくなっていたらどうしようって思っていた。
 姿が変わってしまった俺を彼女は分かってくれた。
 見渡してみても怪我もなさそうだ。本当によかった。少し弱っているのは、疲れているのだろう。
彼女は語る。今まであったことを俺はそれを黙って聞いていた。
 変わってしまった世界。消えてしまった世界。だけど、こうして出会えた。
 きっと、勇や先生も何処かで生きているはず。他にもきっと……
 彼女はそう語る。探してみるわと彼女は言う。
 今なら、今の自分ならば彼女、一人くらいならば守れるはずだ。
 だから、だから、一緒に……
 そう口を開き掛けた瞬間。
 彼女は一人で探しに行くと言った。
 どうして、なんで、一緒に行こうとは言わないのだろう。
 彼女は立ち去ってしまった。

 結局、千晶はひと言も俺の話を聞いてくれなかった。
 嬉しいとは言ってくれたが、どこかで変化してしまった俺を恐れているのかもしれない。


 改めて異形と化した己を理解した。


 姉さんがとても怒っている。
 自分が怒れないことを代わりに怒ってくれている。
 それがとても嬉しかった。

 ニンゲンよりもアクマのが優しい。
 それが無性に悲しくて、嬉しくて、おかしかった。
 

 ああ 俺もこっち側なんだもんな


作品名:世界が終わる夜に 作家名:かなや@金谷