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榊@スパークG51b
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いつものこと、なのだけど、

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何故ひと言ひと言にエクスクラメーションが付くのかわからなかったが(いやただ単にそういう気分なだけなのだろうが)アメリカが、言った一言にドイツはちょっと驚いた。
なんだ、そうか?
別に誤魔化すつもりはない。けれど、自分で鏡を見てもわからなかったそれを、彼がいい当てるとは思わなかった。
「…泣いたのかい?」
「………少し、」
はぁっ、と、アメリカがため息をついた。
そこで『少し、』って、その少しでも認められるキミってのが、アレだよね!
またエクスクラメーション。
けれど、苦笑して、途方に暮れたようにアメリカは言った。
「キミこそどうしたのさ」
だいじょうぶかい?その声が、言っていた。
自分が一番だが、彼は悪いヤツではない。こういうとき、とてもやさしい。
「『べつに』。それこそ『いつものこと』だ、」
ドイツは苦笑して、紙カップのコーヒーを飲んだ。
(…にがい、)
隣でアメリカが同じような顔をしていた。
ふと目があって、苦笑した。
「…ね、」
「…な、」
ある晴れた、
まだ少し早い春の日の、午後だった。










?ドイツの場合


ドイツとプロイセンは仲のいい兄弟だった。
兄弟と言うか、今は同じ『ドイツ』であるというか。
家族で、大切なものだった。
ドイツはプロイセンを尊敬していたし敬愛していたし、目標としてきたし、模範でもあった。
ちいさな頃の話だ(そして言うと怒られるし恥ずかしいしだから内緒だったけれど、実は、今も)
ドイツはプロイセンが大事だったしドイツはプロイセンが好きだった。
家族としてだ。
(…さいしょは、)
今は、少し違う。
それが彼を少し苦しくて、泣きたいような気にさせていた。
プロイセンが、同じように自分を好きだと言ってくれたからだった。
「…兄さんが、俺が苦しいならやめようと言ったんだ」
ぽつりと、ドイツが言った。
俯くわけでなく天を仰ぐわけでなく、口元のコップを傾けて、こくり、と中の液体を嚥下する合間に。
ドイツが言った。兄さんが、俺が苦しいならやめようと言ったんだ。俺は嫌だと言ったのだけど。
アメリカは絶句した。
「な、ちょ、キミ…っ、それ…っ、」
「…?ああ、大丈夫だ。きちんと解決済みだ。もう何の問題もない。けれどな、」
ドイツは言った。なんでもないことのように。
でもそんなことを言われたのが少々ショックでな。
今朝会議に行くと離れたときにほんの少し泣きたいような気になってな、
涙ぐんだのだ、と言った。少し苦笑して。
それにアメリカが憤った。なんだい!なんだいなんだいそんな、ぜんぜん大したことじゃないか!どうして笑うんだい!もっと何か言うべきだよ!!たくさん、エクスクラメーションを付けてアメリカが言った。キミはなんかこう、そうやって聞き分けがよすぎる!!キミの何がイヤかってそれがフリじゃないとこなんだよ!
アメリカが言って、眉間に大きな皺を寄せた。これあしたクセになってたらどうしてくれるんだい。(まるでキミのようだよ!)アメリカがドイツの眉間の皺を持ちだして嫌そうに言う。ドイツは少し笑って、まあ、お前にそう言ってもらいたかったのかもしれないな、と言った。
不満はないのだ。不自然なことなのかもしれなかったがドイツにはプロイセンがすべてだった。そう、今朝だって、離れさえしなければ泣かなかった(その確信が、ドイツにはあった)(どうしてかはわからなかったが、やはり、『それ』が理由なのだろうと思った)
「お前がそうやって、自分のことのように言ってくれるから、でもあるんだろうな」
ドイツは分析していた。自分は、知っていた。今日会議室に行けば、今目の前で自分にそんなこと言われて、とても嫌そうな顔をしている彼がいること。彼の顔を見ればなんとなく、自分が救われたような気になる気が、したこと。
「――お前は『ヒーロー』だからな、」
言うとアメリカはものすごくイヤそうな顔をして、でも、「当たり前だよ!」と言った。
「でもそういう言い方されたくて、やってるんじゃない」
彼がすこし悔しそうに言った。
「わかってる」
「どうだか」
ふんっ、と彼はそっぽを向いた。むぐむぐむぐむぐ!と、その菓子を咀嚼する口が忙しなく動いていた。彼は食べることで心を落ち着ける癖がある。ふむ、とストレスを与えてしまったことに苦笑して、まあ、いつものことだ、と彼に言った。ほんとに…まったくだよ!アメリカは憤慨してコップを一気に傾けてしまった。空になったそれを離れたゴミ箱に、向かって投げる。
「―む、」
「ふん、」
ナイスシュート、
言うと、ヒーローだからね!と嫌みったらしく言われてしまった。ははは、とそれに苦笑して、だから感謝しているんだ、とドイツは言った。
じゃあキミのそのMunchkinひとつちょうだい。
むしゃむしゃむしゃむしゃ、自分のものを頬張りながらアメリカがちろりとドイツの方を見た。
その目が、拗ねていたから。
「…ふたつやる」
ドイツは苦笑した。
ひとつでケッコウ!アメリカがふんっ、とまた鼻で音たててドイツの差し出した袋に手を突っ込んだ(あぁっ、もうっ、チョコだ!俺はクリームがほしかったのに!)(Shit!とそんなところまでツイていないヒーローにまたくすくすと笑って、ドイツは自分の摘まんだそれをアメリカの袋に入れてやった)(……… おかえし、)(と、それに地団太をやめた正義の味方がぼそりと新しい、ミルクチョコレートコーティングのドーナツをちぎって、ドイツの袋に入れてきた)(どういたしまして、とドイツは言った)(己も飲み終わったカップを投げてゴミ箱に入れた)(ふん、と横でアメリカがもそりと動いた)(ほんの少しだけ寄り添って、彼らはしばらく風の音や揺れる木立ちの音を聞いていた)(それに、時どき鳥の鳴くこえ)(ひとの気配)(たまに小さな子の、嬌声)
「…静かだね」
「そうだな」
「…平和だね」
「そうだな」
俺も君みたいに思えたらよかったのに、と彼が肩に顔を埋めたので、ドイツはそうだな、と返事をした。
彼が、恋をしているのを知っていた。










ドイツはプロイセンがいちばんなんだ。
プロイセンもドイツがいちばんで、でもだから、ときどきつらい。
アメリカは思う。でもドイツはプロイセンがいちばんなんだ。プロイセンも。
アメリカは羨ましく思う。でも俺は、違う、と。


?アメリカの場合


アメリカには兄、みたいなものがいた。
イギリスと言う名前で、アメリカとは離れた場所に、住んでいた。
「そもそもそのせいなんだよ」
アメリカは言った。
「キミたちと違うのは、俺たちが『家族』じゃなかったことさ」
いや自分たちは確かに『家族』であったけれど、血が繋がっていなかった。アメリカは言う。キミたちは血族だろう?それってどんな、かんじなのかなあと。
アメリカは自分の隣の青年が羨ましかった。
兄と、血が繋がっていたからだ。
「キミたちはいま、同じ『ドイツ』であるわけだけど、」
それってどんなかんじ?とアメリカは言った。その特異性で、兄の存在を確保した弟。それについてどうこう考えたことはないが、『すきなひと』とそうやって、繋がれた彼をアメリカはほんの少し羨ましく思っていた。