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闘神は水影をたどる

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「なんでこんなところに来たりしたんだ、ロゼリッタ」
 ロゼリッタは浮かびかけた涙を拭って、床の上で粉々になった円板を見遣った。
 リグドは妹の肩をもう一度撫でてから、しゃがみこみ、その中では大きな破片の一枚を拾い上げた。表と裏を交互にかえしながらしげしげと赤茶の残骸を眺め、ついで男を見た。
「群島諸国の辺境、ナサ島で内乱が起きたな」
 男がわずかに反応した。リグドに打ち込まれた右肩が痛んだのか、顔を歪める。
「異民族の自治区が独立を求め、ナサ王に反旗を翻したと報告を受けている。島はいま凄惨を極めているらしい。洋上会議では、両者の停戦協定の場を設けることが決定している」
 男は今度はなにも反応しなかった。リグドは男の前に破片を放った。破片は真っ二つに割れた。ロゼリッタは男が怒り出すような気がして、兄を見つめた。
「そこに描かれている獣、ナサ島独特の宗派の神獣だな。それは祭祀だけが持てる鏡だろう」
「かがみ?」
 ロゼリッタは床に散らばった欠片をあらためて見た。赤茶の土のあいだに鈍い輝きがあるのに気づく。は、と息が漏れる。男は神職に就いている者からもっとも縁遠く感じられた。ひとを殴り殺すような人間がまさか。
 そこまで考え、ロゼリッタは倒れ伏した海兵を悲痛に見つめた。
 ふたりの海兵がさきほど男に殴り殺された海兵を抱き起こし、否、死んではいなかった。元の造作の見る影もない顔が、同僚の問いかけにのろのろと応じていた。ほっと頬を緩めたロゼリッタを嘲笑い、男がくぐもった咳をする。リグドは男の視線から隠すようにして、妹を戸口のほうへ押し出した。
「その状態でよくあそこまでやったものだ」
 リグドが言った。
「まず身体を休めろ。処遇についてはそれからだ」
「リグド様、なにを。牢へぶちこんでやるべきです」
 海兵たちは憤った。リグドの視線を受け、押し黙る。
 彼らは同僚を痛めつけられたが、リグドも愛妹を殺されかけている。そのリグドが男の手足を縄で縛るにとどめ、横になれるくらいの自由は許すと、つまりそう言うのだ。男の行動から一時も目を離さない、見張り強化がされることになった。
作品名:闘神は水影をたどる 作家名:めっこ