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人災パレード

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スコールとサイファー、この二人が最上最強だと。

レビテトや他の補助魔法の効果時間が切れたキスティスは念のため、プロテスとリフレクを己にかけて戦況を見守る。
流れ魔法が飛んできてもリフレクで適当な方向に跳ね飛ばすだけだ。
彼らの邪魔にならない方向であれば大地が抉れようが岩壁に穴が開こうが構うまい。
ただし、たまにフレアやホーリー、メテオなどという危険極まりない魔法も飛び交っているので、リフレク切れのタイミングには存分に気を付けたいところであった。
誰だってそんなものには当たりたくはない…。
痛いで済んだら御の字だ。
「時間がねぇって言ってんだろうが! さっさと捕獲されやがれ、このバカ!!」
ぎりぎりと耳に痛い音とともに鍔迫り合いが再び始まる。
力の拮抗した二人が、ガンブレードを合わせたまま動きを止めた。
いや、拮抗しているがゆえに下手に動けなくなったのであろう。
「サイファー、アンタだってよく知ってるだろう! リノアの事を!!」
「あーあー、記憶喪失になりたいくらい身をもってよく知ってるぜ! だからテメェを連れ戻しに来たんだろうが!」
渾身の力でサイファーのハイペリオンを退けたスコールは、己のガンブレード・ライオンハートを地面に掠らせるように持ち下げた。
構えには一部の隙もない。
戦況は一時休戦といったところだろうか。
荒い息を整えながらスコールが呟くように喋る。
「ガーデン内にはリノアのために用意された客室があるのは知ってるだろ」
「……ああ。俺たちは入ったこたーないけどな」
「俺は、何があっても、嫌がっても、断っても、リノアが来たら絶対にその部屋に入る事になるんだ」
一言ずつ区切るように強調するスコール。
嫌気が滲み出ているというか端々から溢れ出している。
「その部屋はな、あのリノアの趣味でかなり装飾されてる」
「…………………………」
「…………………………」
あの、あらゆる意味で魔女なリノアの趣味。
スコールの重々しい口調に思わず想像してしまい、キスティスまでもが言葉を失った。
リノアは基本的に可愛らしい物が好きだ。
乙女らしい趣味と言ってもいい。
白や水色、ピンクなどのパステルカラーが好きだ。
以前、サイファーがスコール経由でリノアから送られた抱き枕型時限爆弾『元気溌剌ジョニー・ゴルバート君3号』は首元にピンクのリボンを巻かれた、まさに大きなテディ・ベアだった。
あれもそういえば凶悪なまでにファンシーだったな、とサイファーが遠い目になる。
「部屋の内装を細かく説明してやろうか?」
「いい、止めてくれ」
「私も聞きたくないわ」
セルフィ辺りなら話を聞きたいと思うのかも知れないが、男であるサイファーと可愛い系よりもシンプル系を好むキスティスとしては遠慮したい。
さらに、その未知の恐怖に溢れた部屋の中に放り込まれる運命のスコールがそこにいるわけで。
あらゆる意味で魔女なリノアとファンシーな部屋と黒尽くめな不機嫌スコール。
この組み合わせを想像してしまった二人は、思わず鳥肌の立った腕をさすってしまった。
そんな部屋の中でリノアの好き好き攻撃を一人受け続けてきたスコールの気持ちを思うと、いっそ眼の前が涙で霞みそうになる。
だがしかし。
「悪ィな、本当に悪いとは思ってんだが……」
「私たちも命とガーデンの安全がかかってるのよ……」
許してくれスコール、といった悲壮な空気が漂う。
ヌイグルミに混じって毒薬や呪殺の本が転がってる部屋なんだ、とスコールがぽつりと呟いたのは全力で聞かなかった事にする。
「ごめんなさいね、スコール。本当に、もうこれ以上の時間はないのよ。言いたくはないけれど私たちがここで時間を浪費している間にもリノアがガーデンを襲ってしまうわ。サイファーだけだと時間がかかりそうなら私も前衛で参戦するわよ」
「おい、センセイ…!」
サイファーが眼を瞠った。
それを無視してキスティスはヘイストを自分にかける。
筋力では彼らに劣ると言えども、キスティスのSeeD歴とヘイストに対する訓練量は彼らにも優るものだ。
そしてキスティスの武器は鞭だ。
攻撃した反動で腕の筋肉に損傷を負うようなヘマはしないし、加速状況下での扱いにも慣れている。
「いいだろう……例えキスティスが相手でも俺は自分を守るためにも手加減はしない」
正しく、自分を守るためであろう。
負けて捕獲されて連れ戻されたら行く末はリノアの待つ彼女の部屋という、地獄以外の何物でもない運命が待ち受けている。
スコールがライオンハートを正面に構えた途端、サイファーが叫んだ。
「スコール! テメェ、世話になってる女にまで手加減なしかよ!  俺たちだって好きでテメェを生贄にしようとしてるワケじゃねぇんだぞ! そりゃセンセイは女としては致命的な必殺技を持っててモテない事に悩んでるけどな!」
「うるさい! 俺だって出来る事ならキスティスとは戦いたくなんかない! いつも俺たちを支えてくれたキスティスには凄く感謝してる! キスティスの必殺技がモテない原因だとか俺には関係ないんだ!」
えーと…。
今、物凄く要らない事まで口走りませんでしたか、そこの教え子二人。
あらゆる意味で魔女なリノアの脅威と先程まで繰り広げていた戦闘のせいでヒートアップしているのは理解しないでもないけれど、たった今、物凄く言ってはいけない事まで支離滅裂に叫びましたね、そこの指揮官ども。
キスティスのどこかでブチッと何かが切れた。
それはもう、綺麗さっぱり盛大に豪勢に潔く切れた。
ヒートアップして未だに支離滅裂な言い争いを続ける二人を無視して、滅多に使わない魔法を口の中で小さく詠唱する。
「オーラ…」
ぶぅん、と羽虫の羽音のような耳障りな音を立てて魔法が発動する。
ちなみに、オーラという補助魔法は特殊技を出しやすくする魔法だ。
そしてキスティスの特殊技といえばモンスターの攻撃技を己のものとして使う青魔法だったりするわけで。
そう、今ならばキスティスは青魔法が使える。

キスティスを無視して言い争っていた二人が今になってようやく、オーラを使い青魔法のモーションに入ったキスティスに気付き。
「キスティス、まさか…ッ!!」
「センセイ落ち着け! 話せばわかる!」
と、リノア襲撃時並に慌て始めた。
ごごごごごご…と地鳴りを背負う勢いで凄絶な表情をキスティスは二人に向けた。
「貴方たちに話してもわかるものですか…。ただモンスターの技が使えるというだけでモテない原因はソレだなんて言われた私の気持ちなんて…ッ!!!」
いや、たぶんモテない理由はそれだけじゃないと思うのですが。
顔を引きつらせてそんな事を思ったスコールとサイファーだが、もちろんそんな台詞を吐いたらその時が最後だ。
しかし、口に出して言わなくとも最後の時はわりと近かった。

「思い知りなさい! 青魔法『くさい息』!!!」

濃いモスグリーンの煙幕がキスティスの口から吐き出され、逃げ惑うスコールとサイファーを容赦なく包み込んだ。
その臭いは……青魔法の名前から察していただきたい。
作品名:人災パレード 作家名:kgn