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人災パレード

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激怒したキスティスの青魔法はスコールの鉄壁の魔法防御力をも突き破り、彼はスリプルに眠らされサイレスに沈黙させられバイオに毒されブラインに盲目にされ、あげくの果てにはブレイクで石化させられている。
ゾンビ化と混乱だけは免れているようだがきっちりと戦闘不能状態だ。
サイファーはというと、毒と盲目状態だけで済んだようだった。
おそらくは自前の魔法防御力と状態変化魔法対策の装備品のおかげであろう。
十分に悲惨ではあるがスコールよりはマシと言える。
「セ、センセイ…何で俺まで……ッ」
「あらサイファー、ごめんなさい。貴方たちったらお互いの距離が近かったんですもの」
毒に悶絶するサイファーに返ってきたのは、美貌の才媛と謳われるキスティス・トゥリープ教官の、それはそれは美しい微笑みであった。
盲目状態のままであるがゆえに、その恐ろしい微笑みを見られなかった事はサイファーにとって幸いだったのだろうか。
強制的に戦闘を終わらせられて転がる教え子二名を放置したまま、キスティスは携帯通信機を取り出した。
「センセイ、俺にエスナを…」
「ラグナロク、こちらキスティス・トゥリープ。任務完了によりすぐさま帰還する。着陸せよ」
サイファーの呻きを華麗に無視してラグナロクに連絡を付けるキスティス。
『こちらラグナロク、了解しました。………ところで、あの、スコール指揮官が石化してるように見えるんですが…』
「以上、通信終わり」
問答無用で会話を終わらせたキスティスの平坦な声と、ぷつり、と通信回線の途切れる音がサイファーの耳に届いた。
視覚を暗闇で覆われているせいでキスティスの表情が見えない。
見えた方が怖いのか見えない方が怖いのか、判断しかねるところが何となく物悲しいサイファーである。
「センセイ、エスナ……」
「さ、二人とも。ガーデンに帰るわよ!」
状態回復魔法をかけてくれと請うサイファーの声は、キスティスにやたらと明るく軽やかに無視された。
スコールと違って沈黙状態にまではなっていないのだから自分でエスナを唱えればいいのか、とサイファーが気付いたのはラグナロクの倉庫に荷物のごとく格納された後であったそうだ。
以前、スコールとサイファーの事を、たまに抜けてる二人だと評価したのはキスティスだったりする。



【SIDE : リノア迎撃】

あらゆる意味で、と口に出す時の恐怖を考えて欲しい。
一つの意味でならば誰も泣きはしなかったのに。

スコール捕獲作戦が立派な戦闘であったのと同じように、リノア迎撃作戦に残ったメンバーもまた、立派な戦闘状態に陥っていた。
戦争のように忙しいという比喩表現があるのだが、まさにそのような状況だ。
やってくる相手は、あの、あらゆる意味で魔女の、リノア。
忙しさの理由を言うならこれだけで済むというお手軽さがいっそ泣ける。
次々と入る報告を聞くのはまずアーヴァインの仕事だ。
『ガーデン教官班より報告。生徒と非戦闘員の避難完了。護衛班を残してSeeDランクの高い者から順にガーデンへ帰還します』
『報告。全防衛班の配置を完了しました。布陣は防衛警戒陣のまま待機態勢に移ります』
『諜報班より報告します。目標人物はガルバディア方面より列車を使って接近中、ガーデン到達予想時刻はジャスト正午です』
「それは何もアクシデントがなかった時の予想時刻だよね〜」
語尾のぬるいアーヴァインであっても、リノア迎撃戦の指揮権限を与えられたとあってはのんびり笑ってはいられない。
アーヴァインの補佐を命じられたゼルとセルフィとて、自分らの行動の一つ一つにガーデンの安全がかかっていると思えば、否応なく脳ミソをフル回転させざるを得ない状況下であった。
ちなみに、現在時刻は10時を回ったところだ。
「な〜、アーヴィン、ここらで一つ工作入れとこか〜?」
「一般人に迷惑かけるのは心苦しいけどよ。俺らがまずしなけりゃならないのは時間稼ぎだろ?」
そう、サイファーらスコール捕獲班がスコールを連れ戻してくるまでの時間稼ぎが彼らに与えられた至上命令なのである。
しかし、アーヴァインは渋い表情を浮かべた。
「うん、鉄道関係に工作班を送り出すのは良い案だと思うんだけどさ〜。ちょっと落ち着いて考えてみてよ〜。相手はあのリノアだよ〜? 例えば、停車する駅に爆破予告を出したとしても彼女だったら運転手を脅迫してでも列車を発車させるだろうし、実際に駅を爆破するのは人道的にヤバイし、線路を爆破なんてしたら下手するとリノアがもっと速い移動方法に乗り換える可能性があるんだよね〜。町で停車してる間にその情報がリノアの耳に入ったら、確実に軍用ジープを乗っ取ってでも最速の手段を探すと思うんだよ〜」
長い台詞だ。
しかし、その台詞の中には紛れもなくリノアの脅威が表れている。
なぜならば、今アーヴァインが言った事を実際にやりかねないのがリノアという人物だからである。
「う〜ん……あ! したら無人駅に着く直前の線路に細工したらええんや!」
セルフィの案に、今度はゼルが難色を示した。
「どういう細工をするんだよ? 線路を爆破なんてしたら前の駅に戻るしかないだろうけどよ、それって俺らがリノアの行動を予測しにくくなっちまうぜ」
「せやから、崖崩れが起こりそうなポイントを選んで人為的に崩すんや」

セルフィの策はこういう事である。
あえて人力で線路を復旧可能な程度に土砂を線路に落とし、乗務員たちが復旧させている間、リノアを足止めする。
なるほど、とアーヴァインとゼルは思った。
「それならリノアは大人しく待つだろうね〜」
「不機嫌にはなるだろうけどな…」
ゼル、それは禁句だ。
「とにかく! うちらにも時間ないんやし〜、サクッと指示出して動かんと!」
「じゃあ、工作班のメンバー選びと責任者はゼルに頼むよ〜。こういうのはゼルの得意分野だよね〜」
「おうよ、リノアに近付くのかと思うだけでちょっと……いや、男がこんな事でブルってちゃダメだよな。SeeDから何人か適任者選んで連れてっから、そいつらが抜けた穴の方はアーヴァインが指示出してくれよ」
男らしくありたいお年頃なゼルは、特攻隊としてリノア迎撃作戦の先陣を切る事となった。
ゼルが端末を操作して諜報班と防衛班から数人選び、次々と指示を出していく。
それを確認しながらセルフィは情報処理班と諜報班の人員調整を行い、端末を何やら操作し始める。
アーヴァインはというと、防衛班の人員調整を済ませてからまだ完了報告の来ない救護班の様子を窺う。
救護班は物資の搬入などもあるせいで準備に忙しいらしい。
「ゼル、ひとまずリノアの来る路線の線路沿いに進んでていいよ〜」
「わかった。そいじゃ、適宜指示頼むぜ!」
「いってらっしゃい〜」
セルフィとアーヴァインに見送られてゼルは指揮官室を出ていった。

ガーデンを動かすわけにはいかない以上、ブリッジにいる必要はなく指示と報告の応酬には指揮官室のメイン端末で事足りる。
セルフィはゼルが出て行くと同時に情報処理班に向かって回線を開いた。
「情報処理班へ指示。今転送した条件に全て合致するポイントを最優先で見つけるように〜。マシンパワー足りへんかったら庶務処理の優先度下げてええから、とにかく最速で頼むで〜」
作品名:人災パレード 作家名:kgn