SSやオフ再録
ナミと朱璃、そして朱璃・翆の場合
朱璃:ナミ?何だよこれ。
ナミ:ああ、これは笹のはだよ?そんで色々な飾りしてね、で、はい。この短冊に願い事を書くんだよ。
朱璃:・・・?なんかの宗教か?
ナミ:あはは、面白い発想だね?今日はね、昔あまりにお互い好きすぎて天帝の怒りをかった夫婦が離れ離れにされたんだけど、年に一度だけ会えるっていう言い伝えの日なんだよ。空にいるんだけどね、天の川っていうのに隔てられた2人が会える日。
朱璃:?ますます分かんないよ。なんでそんな大切な日だってのにこんな俺らとかの願い事まで叶えなくちゃいけないんだ、そいつら?
ナミ:確かにねー。まあ、深く考えない。楽しめばいいんだよ。さ、願い事、書いてここに括りつけておきなさい。
朱璃:ふーん。・・・・・。(かきかき)
ナミ:だいぶ字、書けるようになったねー。
朱璃:なっ、ちょ、見るなよっバカっ。ナミはどうなんだよ、もう書いたのか?
ナミ:うん。もう飾ってるよ。
朱璃:・・・なんであんな上なんだよ。俺届かないじゃん。
ナミ:うーん、高いほうが叶えてくれるかなって思ってねー。朱璃のも高いとこにつけてあげようか?
朱璃:いいっ。だって自分でつけたほうが叶いそうだし。・・・見るなよ?
ナミ:はいはい。じゃあちょっと狩りでもしてくるかなー。
朱璃:あっ、俺もっ俺も行くっ。ちょっと待ってよ。
宿の部屋から出ようとしていたナミを、短冊をつけていた朱璃はあわてて追いかけていった。
小さい朱璃には笹のはの一番下につけるのが精一杯で、それは下でゆらゆらとゆれていた。
“いつまでもナミといられますように”
上のほうでは笹のはに隠れて見えない短冊がたまにそっと風にゆられていた。
“朱璃が幸せでいられますように”
朱璃:・・・。
翆:朱璃?どうしたんだ?
朱璃:ん?ああ、ううん何でもないんだ。翆、もう書いた?
翆:ああ、もうすでにつった。
朱璃:早いな〜。待っててくれたっていいじゃねえ?せっかちなんだから〜ん。
翆:・・・気持ち悪い言い方するな・・・。それにしても朱璃が七夕しようって言いだすとはな。
朱璃:ん?まあね。前は嫌いだったんだけど・・・でも翆とならやりたいなって思って。で?何書いたのー?
翆:う、うるさいな、何だっていいだろ?
朱璃:ケチー。で、どこつったんだよ。
翆:上のほうだ。
朱璃:・・・なんで?
翆:高い方が叶えてくれそうだと思ったからだけど・・・?何か、変か?
朱璃:・・・いや・・・そっか。ふふ。そうだな、高いとこの方がきっとおり姫と彦星も
見てくれそうだよな。
ふわっと笑ったかと思うと朱璃も台を持ってきて上のほうに短冊を付け始めた。
翆:・・・お前のそれは・・・うれしいが願い事というより・・・宣言では・・・?
翆がすこし赤くなりながら言った。
“翆といつまでもずっと一緒にいる”
えーいいじゃんとかいいながらつり終えた朱璃は翆と一緒に笹のはのそばにおいたテーブルで酒をかわす。
朱璃の短冊はそよそよと風にゆられていた。そしてその近くで翆のつった短冊も同じようにゆれている。
“2人が幸せでいれますように”