SSやオフ再録
日常:雨(サリ・シキ)
バケツがひっくりかえったような、とはこのことだとシキは思った。
少し向こうの景色が、ぼやけて見えない。
こんな雨は、久しぶりだった。
外を見ていたシキは窓を閉め、そしてベッドを見る。
・・・こんなサリを見るのもかなりめずらしい事だと思った。
いつもは飄々として、シキをからかったり、優しかったり、Hだったりするサリ。
そんなサリがぼんやりと何を見るでもなくベッドの上に座っている。
ここはサリに用意している部屋。
いつもならうるさいくらいにシキにまとわりつくサリが、全然姿を見せないので変に思ったシキが様子を見にきたのであった。
「・・・あの、マクドールさん・・・?どうしちゃったんですか・・・?大丈夫ですか・・・?」
シキが来たことにも気付かない様子のサリが心配になり、ベッドに近づいてサリの両肩をそっと持ち、声をかけてみた。
すると、少しの間の後、サリの肩がピクンと動く。
何も移していなかった目が、シキをとらえる。
「・・・・・シ、キ。」
「はい。あの、大丈夫ですか?」
何の輝きもなかったサリの紅い瞳が、だんだんといつもの美しい妖艶な色をとりもどす。
「シキ。」
「はい。」
呟くような声から、だんだんはっきりした声に変っていく。
シキは素直にそのたびに返事をした。
「・・・俺・・・?・・・ああ、そうか・・・」
「?マクドールさん?」
すると今度はその紅い目でじっとシキを見つめてくる。
シキはたまらず真っ赤になりながら俯こうとした。
「シキ。ああ、シキだね。」
そう言うと、サリはぎゅっとシキを抱きしめてきた。
「え、あ、あの、ちょっと、いったい・・・?」
「ふふ、何でもない。何でもないよ、大丈夫。お前が晴らしてくれたから。俺は大丈夫だから。」
「え?俺が何ですって?・・・ちょ、あの、わっ、ちょっとー」
サリはニッコリ笑うと抱きしめたシキをさらに抱きしめる。
シキは訳が分からないといった様子だったが、でもサリがいつものサリになっていってくれているようで、赤くなりながらも、ホッとしていた。
・・・雨は・・・嫌いだ・・・でも・・・俺には・・・シキがいてくれるから・・・。