SSやオフ再録
行事:節分(サリ・シキ)
「ねえ、知ってる?今日って、この巻きずしをまるかじりする日なんだって。」
サリがニコニコと言ってきた。
「はあ・・・。てゆうかこの世界にそんな習慣があるんですか!?」
「細かい事は気にしない。てことで、どうぞ。」
え?というシキの突っ込みを軽く受け流して、サリはどん、とテーブルに1本まるままの巻きずしを置いた。
「早・・・。てゆうかこれ、どうしたんです?」
「俺が作った。」
「わ、カイサさんにキリルさんも、いつの間に?」
「あはは、シキくん、まるで虫が突如湧いたみたいだね。今来たんだよ。」
キリルは相変わらず悪気もなくとんでもない事をニコニコと言った。
「ははは・・・。てゆうかこれ、カイサさんが作ったんですか?すごいなぁ、やっぱり料理はほんと上手ですね。」
「ほんとにね、家事能力は抜群だよね、おつむはいささか疑問だけど。」
「あまり褒めるな、シキくんにサリくん。」
相変わらず無表情のままカイサが言った。
えっと・・・とシキが言う。
「え・・・サリのはそれ、褒めてないですよね・・・?」
「まあ、カイサだからね、気にしちゃだめだよ。」
キリルがニコニコと言った。
「まあ、どうでもいいじゃない。さ、シキ。食べて?まるかじりだよ?そして食べきるまでしゃべらずに頑張って食べないとだめだから。」
「・・・なぜそんなにも勧めるんです?何かあるんですか・・・?」
またニコニコとサリがシキに勧めてきたので、シキが疑うように聞いた。
「とんでもない。これはね、無病息災を願って食べるものなんだよ。この国を担うお前に一番に食べてもらいたいだけ。」
「・・・そうだったんですか・・・ありがとう、サリ。すみません、どうもあなたの親切は疑ってかかっちゃうみたいで。」
「ははは、何気にひどいね。まあいいけど。」
「じゃあ、いただきます」
ニッコリと笑ってシキがそれを手に持つ。
とりあえず長いものなので両手で持って、口を開けた。
「ん・・・。」
けっこう思っていたよりも太いものだったのにびっくりしつつ、苦労しながら大口を開けてくわえた。
そしてなかなか食べにくいなぁと思いつつ、無病息災、無病息災、と願いつつ頑張って黙々と食べた。
「んん・・・。・・・・・ふぅ・・・。けっこう食べるの、大変なんですね、でもおいしかったで・・・って、何!?」
ようやく食べきり、最後の一口をもぐもぐとし終えた後、ニッコリ笑ってサリ達の方を向けば、皆がじっと見ていた。
「うん、なかなかの眼福だったな、サリくんの言った通りだった。」
「だろ?こんなんほんとは誰にも見せたくはなかったけどな、まぁ日頃のメシのサービスってことで。」
「ほんと君たちって変な目でしか見れないんだねぇ。感心するよ。でもうん、シキくん、一生懸命でえらかったね。」
ニヘーっという擬音でも聞こえてきそうな様子のサリに、表情は相変わらず変わらないがシキを凝視しているカイサ。それを一網打尽気味でかえしつつ、シキにニッコリほほえむキリルがいた。
「あの・・・ちょっと・・・何なんですか、あんたらは!?」
「いやぁ、シキのその食べる姿がなんとも・・・まさに放送禁止用語並べたくしたいくらいだったなぁと・・・」
「まぁ、前にも言ったが、フェロモン魔王だしな。」
「なっ・・・」
ゆるす者のしるし発動。
相変わらずニコニコとしているキリルの横でそうとうダメージをくらっている2人がいた。