SSやオフ再録
名無:きっかけ
「君って、あの解放戦争の英雄なんだってね。」
市場でぶらぶらと歩いていたら、人気のない場所まで来たところで淡い髪色をした青い瞳の持ち主がニッコリとして声をかけてきた。
「・・・。」
「それを聞いてどうしても君と話がしたいと思ったんだ。」
先日道案内をした後、この青年はグレッグミンスターの街並みに消えていった。少し、いや、かなりそれを残念に思っていたところだったが・・・。
どういう事だろう。もしやこの人もよくいる類の奴だったのだろうか。
英雄という名に引き寄せられた・・・。
一瞬会えた事に心躍らせたが、次の瞬間にはその心は冷たくなっていた。
「なぜ?」
「なぜ?ああ、話がしたいて思った事?そうだね・・・君があの英雄なら、きっとソウルイーターを持っているだろうと思ったから、かな?」
それを聞いた刹那、完全に警戒心を丸出しにしてものすごく冷めた目で相手を見た。
たいていの輩はこれで怖気づく。
だがそんな様子も気にならない、いや、気づいてはいるが怖気づく事なく、彼は続けた。
「何か誤解を招いたのならすまない。ただ・・・それの前の持ち主の事、聞きたかっただけなんだ・・・彼とは古い知り合いでね・・・。」
この紋章に気づいた時点では、もうありえないだろうと思っていたがこれを奪いに来た敵かと思った。
だがどうやらそうではなさそうである。
しかし・・・
「な・・・ぜ・・・?」
「テッド、とは言わなかったかい?その前の持ち主は?」
警戒心が溶けていく。
テッドの名前を聞いたからだ。
そしてその名前を呼ぶ声があまりにも・・・優しく暖かかったからだ・・・。