SSやオフ再録
日常:甘いヒトトキ(紡がれし百年の時・ゼフォ主)
*甘いヒトトキ(裏)は、「幻水裏とりまとめ」にあります。
紡主=リク
夜、食事もお風呂も終え、リクが自室にて遺跡で手に入った資料を読んでいるとノックがした。
「どうぞ。鍵、かかってないです。」
「・・・誰が入ってくるかも分からないのに不用心だねえ。それに誰、とも確かめないんだ?」
「ん・・・?ゼフォン?」
リクが入口を見ると、ゼフォンが呆れたような表情を浮かべて立っていた。
そしてリクがソファー代わりに座っているベッドの横にきて自分も座る。
「どうしたの?何かあった?」
「いいやー何も?ああ、厨房に立ち寄ったらね、ヌミストロがお菓子作っててさー、貰ったよ。でもボクはいらないし。だからキミにあげようと思って。」
そう言ってゼフォンはニッコリ笑って、リクの前にクリームの乗ったお菓子を差し出してきた。
「え?ああ、ありがとう。・・・・・・。」
「ん?何?どうしたの?」
リクがなんともいえない顔をしてゼフォンを見るので、ゼフォンは相変わらずニッコリとしたまま首をかしげた。リクは困ったように苦笑した。
「いや・・・。そう口元にもってこられても・・・。えっと、自分で食べるよ。」
「そう?書類持ってるし、邪魔にならないように、て思ったんだけどねぇ。」
邪魔、というなら既に横に座ってる時点で邪魔をしてくれていると思うんだが・・・と思いつつも、来てくれたのが素直に嬉しいので、リクは困ったような笑顔をしたまま手に持っていた書類をまとめて下に置いた。そしてゼフォンからお菓子を受け取る。
「ん・・・美味しいね!ありがとう、ゼフォン。でもなんで厨房に?」
リクがあの人を惹きつけてやまない笑顔でニッコリとお礼を言うと、ゼフォンも嬉しそうににっこりとし、それから口を開いた。
「ああ、シャルフにね、忠告をしにね?」
「忠告?」
「うん。だって料理バカな彼すらもキミの事、妙な目で見てるからねぇ。一言言っておかないと気が済まないじゃない。」
「妙な目?えっと、僕を?・・・僕なんかシャルフに変な事したかな・・・?」
「・・・すっかり団長らしくなっちゃったと思ってたけど・・・まだまだ何も知らない子供なんだねえ。」
リクが首をかしげると、ゼフォンが呆れたように言った。
「またそれ?なんでゼフォンは僕の事そうやって子供扱いするのかな。意味分からないよ。」
「相変わらず素で言ってくるねえ。まあいいけど。とりあえずシャルフがいなくてヌミストロがいたんだよね。で、あの調子でいらないって言ってるのにそれくれたから。・・・んーでもキミが食べてるの見てたらちょっと欲しくなったかもね。」
「あ、じゃあ半分こに・・・」
「いや、いいよ。最後の一口だけ、ちょうだい。」
「そう?」
そう言われたのでとりあえずそのまま食べ、あと一口、というところでリクはゼフォンに差し出した。
するとゼフォンはニッコリと首をふってから言った。
「あーん。」
「え?」
「何?食べさせてくれないの?」
「え?え?えっと・・・別にいいけど・・・。」
リクは少しワタワタとしながらそう言って、そのままゼフォンの口に菓子をそっと入れる。
内心少しドキドキしている。
「ん。あまーい。よくこんな甘いもの、食べられるねえ。」
「そう?美味しかったけどなー。」
「・・・ああ、団長さん。」
「・・・。何?」
「指。クリーム付いてる。」
「ああ、ほんとだ・・・て、ちょっと。」
指についているクリームを自分で舐めとろうとする前にゼフォンに手をつかまれ、そのままその指はゼフォンの口の中に入っていった。
そしてそっと指を甘噛みされ、指の腹を口の中の舌で舐められる。そしてそのまま舌の先で指の腹や指先を舐められ挙句にチュク、と吸われ、リクは思わず体をピクリ、とさせた。
「ちょ・・・ゼフォン・・・。」
「ん・・・?何?うん、やっぱりこっちの方が美味しいな。それに、んーいいねえ、その表情。やっぱりボクは甘いお菓子よりも、ある意味もっと甘そうなキミの方が断然いいと思うなあ。」
そう言った後でゼフォンが指から口を離してニッコリとする。
「な、何を・・・え、ちょ、ゼフォン?何ニコニコしながら体乗り出してるんだ!?」
実際とてつもなく良い笑顔でゼフォンは体を乗り出した後、リクの肩を持ったかと思うとそのままベッドに押し倒していた。
「子供扱いが納得いかないんでしょ?だからちゃんと大人扱いしてあげるんじゃない。」
「またそんなっ・・・ちょ、ちょっと待って。入って来た時君が言ったように誰が入ってくるかも分からないんだから!ね?」
「何が、ね?なの?」
「お願いだからどいて欲しいな、と・・・。」
「うーん、いいねえ、君の口からお願い、とか。どうせならボクが欲しいとお願いしてもらいたいけどね、ボクとしては。」
「何良い笑顔でっ!ちょ、待って!やだ!ちょ、ゼ、ゼフォンーーーー」
ゼフォンは押し倒したリクに体を押し付け、そして口づけた。
軽いキスともただ甘いキスとも違う、これからの始まりを告げるキス。
そうして始まる宴。
*甘いヒトトキ(裏)
・・・・・・
その後。
「ってわ、忘れてたっ!入口!!」
リクが不意に思いだしたかのように身体を起こそうとした。
「ああ、いいじゃない、別に。見つかったら見つかったで。」
「よ、よくないよ!」
「そう?ボクはむしろ皆に見せつけたいくらいだけどねえ。」
どうにもボクが小さいからか、皆なんか油断してるというか、侮ってるんだよねえ、ホント困ったもんだよ、と呟くと、リクが焦ったように言った。
「ちょ、見せたいって何言って・・・ホントゼフォンって!!」
「どうせ声、漏れてんじゃないのかなあ?」
ゼフォンが意地悪く言うと、リクがまた真っ赤になり、口をパクパクとさせた。
「ふふ、ウソウソ。」
「え?ホントに?」
「うん。ドアは閉めた時に鍵かけてるよー。」
「なんだ、良かった!・・・・・・・・・・・・えっと・・・声の方も、嘘、だよね?」
「ん?」
恐る恐る聞いてきたリクに、ゼフォンはまたとてつもなく良い笑顔でニッコリとし、"可愛い”とだけ言って軽くリクにキスをした。