SSやオフ再録
日常:リク捧げ文(おもに坊)
坊=リオ
2主=セイノ
同盟軍のリーダーであるセイノがルカを倒した後、初めてリオと出会ったのがバナーの村であった。
セイノの格好を真似た小さな少年に言われて歩いていった奥の道。金髪の男性が遮ってきたが、その少年、コウが「助けて」と叫ぶ事により走って行ってしまい、セイノらはそのまま奥に進んだ。そこには静かに釣りをしている少年。
するとビクトールやフリックにカスミ、そしてルックまでもがこぞってその、緑色のスカーフを頭に巻き、赤い胴着の上に枯れ草色のマントを羽織っている少年に話しかけだした。
「久しぶりじゃねえか!リオ!」
「お久しぶりでございます、リオ様……」
「……久しぶり」
皆知り合いなの?ていうかあのルックまでもが不機嫌そうな顔を和らげて声をかけている……とセイノがポカンとして見ていると、リオと呼ばれた少年が振り返った。そして「久しぶり……」と笑いかけてきた。
それ以来、セイノはしつこくリオに付きまとっている。
「お前懲りねェ奴だなぁ」
通りかかったビクトールが呆れて言った。
セイノは今日も手伝って欲しい、と野を越え山を越えてリオを迎えに行き、帰ってきたとたん軍師のシュウにつかまってしまった。その隙を狙ってか、シーナがリオをどこかに連れ去ってしまっており、戻ってきたセイノがその旨ルックに聞いて「シーナさんのバカ!」などと怒っているところであった。
「だって!僕はマクドールさんと早く打ち解けたいんです。早く仲良くなって、もっと……。……あんなに戦闘強くてそしてカッコいい人で、そしてものすごく皆から慕われていると言うのに……。僕はあの人にちゃんと笑って欲しい……。あ、えっと、とりあえず僕、探してきます。シーナさんの事だから、絶対その辺でナンパ付き合わせてるか酒場のような気がするっ……!」
何か言いかけてやめたセイノは「じゃあ、」とビクトールとルックに手を振って走っていってしまった。
「あいつなりになにか感じとってんのかなぁ?リオの性格」
「知らないよ、そんなの。僕に分かる訳ないだろう?」
「フフ……。まったくお前は。そんな事言いながらもリオに再会してからえらくリオの事気にしてるじゃねぇか、お前も」
「は?妙な事言うなら切り裂くからね?僕はこれでも忙しいんだ。あんたみたいに、する事ない暇人じゃない。無駄口たたいてんなら、とっととどっか行ってよ」
「怖い怖い」
ビクトールはそう言いながらも、笑いながら酒場の方に向かって歩いていった。
「ふん……」
一方。
「見つけた!もー!シーナさんっ!しかも酒場にいると思ったのに、予想外……」
酒場かと思いきや姿が見えず、その辺を探しながら、セイノはレストランでようやく2人を発見した。
「なんだよ?そんな息切らして?どっか戦い行く予定、今すぐあったっけ?」
「ないですけど……でも勝手にマクドールさん連れ出さないで下さいよぉ!僕が連れてきたのに……」
シュンとし出したセイノに、リオはニコリとし、左手を伸ばしかけたが、ふと躊躇してその手を下した。
「大丈夫だよ、セイノ。ちゃんと僕は君を手伝うから。心配するな。あと、すまない、お酒よりはお茶のほうが、と言ったのは僕だ」
「いえ、いいんです、お茶でもジュースでもなんでもお好きに飲んで下さい!それにマクドールさんは謝らないで下さい、むしろ無理言って連れだしてる僕の方が悪いんで……」
「だとよ、リオ!お前が気にするなよ、そんで自由にここでは振る舞えよ!」
「確かにそうですけど、シーナさんはもっと悪びれて下さいよ!」
「え?」
目の前で笑っているシーナとむくれているセイノを見ながら、リオは微笑んだ。
……まさかまた、あの仲間達に会うとはリオは思ってもいなかった。
長い戦いの果てに得た勝利。だが失ったものがあまりにも大きかった。その喪失感は半端なく、そしてまた新たに失う事を恐れ、リオは勝利で皆が浮かれ祝っている中、そっと抜け出したのであった。
その際にグレミオに気づかれてしまい、否応なしについてこられてしまったのはリオの不覚であったが。
「グレミオ……僕は1人で旅に出ようと思っているんだ……」
「何を言ってるんです?私はいかなる時も坊っちゃんから離れませんよ?」
「……頼む……。僕は……もう一度お前を失うなんて恐ろしい経験を、もうしたくない……」
「坊っちゃん……。大丈夫です!このグレミオは不覚にもあんな事になってしまいましたが、それでもレックナート様とリオ様、あなたのお力によってもう一度この世界に存在する事を許されたのですから……。そんな私が、生を許してもらえたあなたのその右手にまた捕らわれるはずがないじゃありませんか。安心して下さい、坊っちゃん。私はずっとあなたの元におりますよ」
「……グレミオ……」
結局グレミオはまた有無を言わさずついてきて、その後2人はあちこちを回って歩いた。
グレミオが力説したように、とりあえずはソウルイーターは暴走する事もなく、そして彼はむしろ下手をすればリオよりも元気な勢いでピンピンしている。
リオはホッとため息をつくが、ふと、右手をぐっと握りしめ唇を噛みしめつつ眠りに陥る事もあった。
そして数年たち、少し生まれ故郷の様子も気になってきたので、リオ達は様子を見に戻ってきていた。ただあまり近寄らないよう、ひっそり静かにたたずむ村に滞在しつつ、漏れ聞く噂でトランが驚くべき早さで立ち直っている事実に胸をなでおろしていたところであった。
そしてそろそろここも立とうかと思っている矢先に、彼らに声をかけられたのである。
今の天魁星に、協力して欲しいと言われた時は正直断ろうと思っていた。だが必死になってお願いしてくる、まっすぐな彼の目に、リオは負けた。
ただ、自分にこの右手がある限り、僕は……。
そして、今いる大切な仲間たち、そして新たに出来た大切な人々には絶対に手出しをさせない、とリオは改めて右手を握りしめて心に誓っていた。
「マクドールさん」
レストランでの後でちょっとした征伐にリオは付き合ったのち、また同盟軍の城に戻って来ていた。
リオは少し汚れてしまったので風呂を借り、それから城の屋上まで一人でやってきて景色をぼんやりと見つめ佇んでいた。そろそろまたどこか旅にでも出ようか、だがとりあえずはトランの自宅に戻ろうと思っているところにセイノがやってきた。
「何」
「……えっと……僕は、結構強いんですよ?」
「?ああ、そうだね。知ってるよ?」
「いえ、力が、とかじゃなくて……えっと、性格もね、あと悪運も、割と強いんです」
「……?そう」
「だ、だからね?だから、その、あれです。マクドールさんのその右手の……紋章にだって負けないです。僕は僕が生きたいように生きますもん。死ぬ時だって、僕が納得して仕方ないと思った時だけなんです!」
セイノは赤くなって逡巡した後でそう言い切った。しばらく唖然としてそんなセイノを見ていたリオは、ふ、と笑ってから立ちあがった。
「……そうだね。……ありがとう」
そして左手を伸ばし、セイノの頭をポンポン、と軽く撫でた後で「じゃあ、またね……」と言いながら屋上を後にした。