SSやオフ再録
「……マクドールさんが……頭、撫でてくれた……」
セイノはしばらくポカンとそこに佇んでいた。
「……もう帰るのかい?」
リオが1階に下りてきてホールを横切ろうとした時、石板の守人がそう声をかけてきた。
「ん?ああ。とりあえずは今回の役目も果たしたしね」
そしてビッキーの元に向かおうとしたリオに、ルックが言った。
「たまにはこの僕が送ってあげるよ」
「いいのか?悪いね」
「……」
そしてリオの傍までやってきたルックは何やら呪文を唱えつつロッドを掲げた。
すると気づけばマクドール邸。
「やっぱり便利だな、それ」
リオが苦笑しながら言った。
「便利扱いしないでよね。僕は僕の気が向いた時しか使わないよ。汗かくの、嫌いだからね」
「ふふ、ありがとう、ルック」
「……別に……。君はセイノに無理やり手伝わされてるんだし、これくらいなら僕も仕事だからね。それに……」
「何」
「いや。君は元リーダだしね。もっと皆に色々頼っても罰は当たらないし皆だって喜ぶと思うけどね。君は色々気にしすぎだ」
「……ルック」
「僕は疲れた。もう帰るよ。じゃーね」
そう言うと、ルックはロッドをかざし、あっという間に消えてしまった。
「気に、しすぎ、か……。……それでも……」
それでもルック。僕は。
慕ってくれ、笑顔を向けてくれる皆が大好きだ。だからこそ……。
リオはふと悲しげな表情をした。
だが、次の瞬間にはニッコリと微笑んだ。
だが、こんな恐ろしいものを抱えている僕だというのに、それでも好意を向けてくれる人がいるという事実。それだけでも僕は幸せだと思える。
だから……そんな幸せな記憶をこうして日々もらっているから……きっとテッドのように……1人になっても生きていける。……ありがとう、みんな。
「あれ?坊っちゃん……?帰っておられるんです?」
階下からグレミオの声が聞こえた。リオはまたニコリと顔を綻ばせる。そして部屋を出て下に向かった。
「ただいま、グレミオ」