SSやオフ再録
日常:お泊り(ティル・ナギ)
「いらっしゃい、ナギくん。」
グレミオがにこやかに出迎えた。
今は小休止状態なので、今日、明日とはお休みをとってもいいとシュウに言われ、ナギは喜び勇んでティルに報告した。
「でさ、俺、ティルのうちにお泊まりしたいんだー。」
ニッコリとナギに言われドギマギしながらティルは言った。
「そ、そう。かまわないよ?じゃあ準備しておいでよ。僕はちょっとルックに頼んで一旦家に帰るよ。グレミオに準備しておくように言っておくから。シチュー、好きなんでしょ?」
「うんっ。やったあ。グレミオさんのシチューっ。」
ナギは満面の笑みを浮かべた後、じゃあ後でねーと言いながら自分の部屋に向かっていった。それをにこやかに見送りながらティルは考えてた。
・・・可愛い。
やっぱり可愛い。
ていうか、お泊まりかー・・・あれ?これって、チャンスじゃ・・・?
思うが早いか、面倒がるルックに気迫で強要させ一旦自分の家に戻ると、グレミオにナギが泊まりに来ることを告げた。
「そうですかー。久しぶりですね、坊ちゃんのお友達が泊まりに来られるなんて。そうとなったらグレミオは腕によりをかけてシチューを作るとしますか。ふふ、こっちまで楽しくなってきましたねー。」
「ほんとだな。ティル様のお友達か。それは歓迎しなくては。ナギくんに会うのも久しぶりだしね。」
なぜかテンションの上がっているグレミオとクレオ。
・・・そういえばこの二人って、僕とナギが恋人同士って、知らなかったっけ?まあ、いいけど。
・・・でも・・・なんとなく嫌な予感がするのは気のせいだろうか・・・?
その後ティルはますます不機嫌具合が増しているルックに連れてかえってもらい、ナギと合流した。またルックに頼もうと思ったら、いつも絶対石板の前から離れないルックがいない。
ちっ・・・逃げたか・・・。
ティルは心の中で舌打ちした。
結局ビッキーにテレポートしてもらい、山を越える羽目になった。こういう時に限って敵が山のようにあらわれる。
ようやく昼すぎに家に着いたときはナギも少し疲れ気味に見えた。
だがグレミオとクレオに歓迎されお茶とお茶菓子を出されたナギはとてもうれしそうだったので良しとするか、とティルは思う。
・・・しかし良くなかった。
2人きりでゆっくり話したり、あわよくばいい雰囲気になりたいと思っていたのに、肝心のナギは楽しそうにグレミオ達と茶菓子を食べながらしゃべっている。
そしてその後もグレミオがいいと言うのに、手伝いたいから、とナギは一緒に台所に行ってしまった。・・・そういえばもうこんな時間なんだ。もうすぐ夕食。まだ2人きりになれてない。
「・・・坊ちゃ・・・ティルさま。」
「・・・え、何?ああ、別に言い変えなくてもいいのに、クレオ。で、何?」
「ふふ、なんだか不機嫌そうですよ?ティルさまがそんなに分かりやすい感情になるのは珍しいですね。」
「え、そう?」
「原因は・・・ナギくんですか?」
ティルは飲んでいたお茶をふきそうになった。
「えっ?な、何?」
「ふふ。」
クレオはニッコリ笑うと、私も手伝ってきます、と部屋から出ていった。
・・・ばれた?
夕食はとてもおいしかった。デザートまで用意されていた。ナギを見ればほんとうに楽しそうにしている。
ま、いいか。ナギが楽しいなら。グレミオは邪魔だけど。
だがクレオが気をきかしてくれたのか、早々にクレオとグレミオは各自の部屋へと帰っていった。
とりあえず別々にお風呂にはいり(ほんとは一緒に入りたいが、ナギに嫌がられるのは困るし、あの2人も家にいることだし)、その後ティルの部屋にいく。
これは、もう、チャンス以外の何物でもないよな?ティルは内心にんまりしていた。ナギはティルのベッドに座りながら楽しそうに今日の事について話している。
「ねえ、ナギ・・・?」
ティルはそっとナギの横に座りながら話かける。
「あの、さ・・・。その・・・僕達って、恋人同士、だよね?・・・だから、その・・・」
と、その時ナギがティルの肩によりそってきた。
「!?えっと、ナ、ナギ・・・。」
抱きよせ口づけようとすれば、肝心のナギは最高の顔をして・・・眠っていた。
「・・・ふっ。そう、だよね?こうくるよね?まあ、嫌な予感が当たったってこと?・・・グレミオめ〜(完全に八つ当たり)。」
だがほんとうに幸せそうな寝顔を見ていると、こちらまで幸せな気分になってきた。
「・・・おやすみ、ナギ。また、明日。」
ナギをきちんとベッドに寝かせ、へたれティルはそっとナギの額に口づけた。