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涼の風吹く放課後 お試し版

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「僕、ラフに出来ないんです。小さいころから服はきちんと着なさいってねえちゃんに言われてて。ちゃんと着てないと突然後ろから襟首掴まれて。」
「キミのお姉さんは相当厳しいんだね。」
「あ、本当の姉じゃなくて、イトコなんですけど、厳しいです…。あれは鬼です。」
 この健気に自分の境遇を吐露する様は、守ってあげたくなるような反面、少しいじめてみたくもなるような感覚に襲われる。
「まぁ、世話したくなる気持ちはわかるな。キミみたいなかわいらしい親戚がいたら。」
「そんな、冗談でもやめてくださいよ…。ねえちゃんのはかわいがるなんて生易しいものじゃないんです。自分の型にはめないと気が済まないんです。」
 両手を握りしめて抗議するかのように俺に訴える。だけど、そうやって必死になるほどかわいくなるんじゃないかな、キミは…。
「そ、それは大変だな。」
 気迫に押されたというよりは、かわいらしさに萌えたというか、そんな自分にうろたえてしまった感じだ。
「はい…。もう高校生なんだから、少しは僕のやりたいようにやらせてほしいんだけど…。」
 すまん、俺にはキミを放っておけない従姉妹さんの気持ちが段々わかってきたよ。だからこそ、キミがそう思うのも無理はないけど。そんなことを思っていると、背後からどやどやと声が掛けられた。

「お、学ラン美少女発見!と思ったらやっぱり涼ちゃんだな。いいね、そのコス。新しい萌えを発見したよ。」
「おはよ、涼キュン。」
「早速ナンパされてるのか?涼ちゃんは。さすがだな。」
 新入生風の3人の男子生徒が近づいてきた。涼はみるみる困惑した顔となって、渋々と返事する。
「違うよ、もう。失礼だよ。僕がちょっと目が悪くて、知り合いを探してじっと辺りを見てたら…。」
「初対面の男の子を一目惚れさせたわけか。」
「もう、からかわないでよ。ごめんよ、勇君。中学校の同級の連中で、ちょっと冗談がキツいんだ。」
 涼がむくれた顔で俺に訴えかける。
「さっそく涼の友達になってくれてありがとう。涼キュンのこと、くれぐれもよろしく頼むよ。」
 涼の中学校からの友達か、と思うと、不思議と心がうずいた。そんな自分に戸惑う。男同士でライバル意識燃やしてどうするんだよ。そもそも、向こう側も友好的に挨拶してきているじゃないか。平静に、平静に。