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涼の風吹く放課後 お試し版

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「あ、あぁ。はじめまして、立花勇と言います。涼君とはほんのさっき知り合ったばかりで、その、別に…。」
「あぁ、気にしないで。俺らの中に涼の彼氏がいるって話じゃないから。」
「もう、そういう冗談はやめてよ。」
 どうやら、涼君は必死に怒って見せている、ようだ。
「ほんと、怒った顔がまた可愛いよな。とにかく、涼ちゃんのことはいじめないでやってくれよ。やさしくしてくれれば、どこまで行ってもいいから。」
「ど、どこまで?!」
 どぎまぎとする俺に、脱力する涼。
「それじゃ、あとはお二人で仲よくな!」
 涼の同級生達は軽い足どりで去ってしまう。どうしてくれるんだ、この残された空気は。

「あいつらはさ、中一の時から同じクラスにいたんだけど、あれでもしょっちゅう僕のことを守ってくれてたんだ。」
「あの調子で、か?」
「そうなんだよ。他のクラスの連中に女の子っぽいってからかわれたり、変ないたずらされそうになるとあいつらがやってきて。」
 ちょっと待て。いたずら? 男に? どうやって?
 ふと、通りすぎていくセーラー服の新入生が目に入った瞬間、俺の頭の中で一つの絵が浮かんだ。そうか、体育の授業のときに服をこっそりすり替えれば…。頭の中で涼が一瞬でセーラー服姿に変わると、そのとんでもない可愛さに一瞬劣情を催したと同時に、自分の妄想力に自分自身たじろいだ。
「勇君? どうしたの?」
「あ、いや、大変だったんだろうなと思って。」
「も、もしかして、勇君もいたずらする人?」
「い、いや、しないから。イタズラなんて。ほんと。約束する。」
 しどろもどろになって必要もない釈明をしてしまう。
「ほんと? 約束だよ。あぁ、よかった、高校になって味方がいなかったらどうしようかと思ってたんだ。」
「味方って…。そんなに寄ってたかっておもちゃにされてたのか?」
「うぅっ、うん…。あまりエスカレートするとあいつらが助けてくれたんだけど。いつまでも頼ってたら情けないよね。僕が強く、男らしくならなくっちゃ。」
「お、男らしく…。」
「そう。高校での僕の目標。男らしい男になるんだっ。」
 …その目標はまぁいいけど、可愛らしく目をキラキラさせながらそれを言わないでくれよ…。うん、キミにとっては本当に切実な問題だと思う。でも、人には向き不向きってものがあるしな…。