二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

涼の風吹く放課後 お試し版

INDEX|20ページ/52ページ|

次のページ前のページ
 

「出来ないよ。勇に嫌いなんて、言えないよ。」
 涼の言葉が、俺の中に組み立てられた稚拙な目論見を木っ端微塵に破壊した。涼に嫌われるよう小細工をした俺を、涼まで勘違いされるような発言を皆の前でした俺を、嫌いだなんて言えない、と言ってくれる。そんな涼をもう苦しめることは出来ない。俺がホモだと涼に肯定されてしまった気もしないでもないが、そんなことは些細なことに思えた。

 少し落ち着いたのか、「本当に馬鹿だよ」と呆れながら、教室に戻るように涼に促された。それだけで済んだのはよかったと言うべきだが、さて、あとはクラスでの事態収拾をしなければならない。
 クラスに戻るとすでに新しい担任となる、見た目30代前半の女教師が教壇に立っていた。俺は担任に「すみません」と断りながら教室に入るが、幸か不幸か、遅れたことを咎める風はない。案の定、担任は後ろからついてきていた涼の顔をまじまじと見ると、苦笑いとともに首を少し横に振っていた。多分、他の生徒に俺らが痴話喧嘩をしているとでも吹き込まれたのだろう。
「ま、まぁ、今日はいいわ、二人とも座りなさい。」
 担任は腫れ物でも触るかのように俺たちを取り扱った。後で少し面倒だな、と思っていると、涼は立ち止まったままで担任に話しかけた。
「遅れてすみません。僕、友達を目覚めさせてきました!」
 教室の空気が一瞬で凍った。担任は絶句し、立ち尽くす。涼は一人、ニコニコと満足げに机に着いた。

 場の空気を繕うような担任の自己紹介と質問タイムにより、一年生を担任するのは初めてであることと結婚3年目であることが判明したこと、既に決まっている席順に基づき、俺は前から3番目の窓際、涼は斜め一つ前に座ることとなったこと、一通り簡単に名前を言う程度の自己紹介をしたこと、オリエンテーションとやらでぞろぞろと校内施設を回ったことなど、教師の下での行事は特に妙なことも起こらずに終わった。ただ、俺と涼の周囲には微妙な空間があり、担任は妙に俺のことを睨んでいたような気がする。